【アルスラーン戦記】月と詩を君と【改訂版】 (ページ41)

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その顔は無自覚ページ41

『やめてくれ。昔から散々妹と一緒にいると姉妹だと勘違いされるのだ』
ギーヴに女のようだと言われたルナはそう言って顔を顰め、心底嫌そうな顔をする。だがその耳は朱く染まって、ほんの僅かに目元が和らいでいる。
その表情に少しピンとくる。
(成る程。ルナは奴の事を…)
彼女はまだ自覚していないかもしれんが、幼馴染の私から見ればすぐにそういうことだと分かってしまう。
気に食わないが仕方が無いと、割り切って葡萄酒を煽る。

そういえば、ルナ自身から自分の素性を知るのだと教えてもらったナルサス卿は彼女をどう見ているのか気になって、目線をそちらにする。
(おや)
すると丁度目が合って彼は面白いものを見たとばかりに笑った。
これは確実に面白がる気満々だ。
(ルナの周りには面倒な男しかおらんのう)
私より一年先に生まれた彼女は昔から私を妹のように可愛がってくれる。年上ぶりたいという気持ちが有り有りと分かって逆に可愛がっていたのは自然の摂理というものである。
そんな彼女だからこそ、私としては小さくてもいいから幸せを見つけて欲しいものだと思う。
(じゃが！ギーヴはナシじゃ！)
と、言ってしまいたいがルナの事だ。顔で決めたわけではないだろう事は分かる。
だから余計に複雑だ。
ふと、ルナの様子を見ると小さなグラスを持って固まっていた。
(？なにが)
表情を伺えば、とても嬉しそうな幸せそうな顔をしていた。良く見れば彼女が持っていたのは、ザクロのシャーベット。
(あぁ、お気に召したようじゃ)
彼女は無類の甘味好きである。自分でも作るし、よく買ってくる。
どうやらここのシャーベットが口にあったみたいだった。

しかし

(その顔は反則的に可愛いのじゃが？私の姉は可愛いがすぎる)
思わず頭を押さえて、天を仰いでしまう。
その突然の行動に隣のギーヴも不審に思ったようだった。
「ファランギース殿？お体でも優れないのですかな？」
「おぬしに心配されるほどでもない」
とりあえずそう返した。私としたことが取り乱してしまった。
向かいにいるナルサス卿を見ると笑いを堪えていた。
大方分かりやすいなと思ったのだろう。その点に関しては同意だ。
ペルール然としている時は私でも表情が読めないが、湯浴みをして落ち着いた為に顔に出やすくなっているらしかった。

周りに花を飛ばしながら、シャーベットを頬張るルナとそれに気づかないギーヴ。
果たしてこの二人は今後どうなることやら。

宴はまだ、続く。