【アルスラーン戦記】月と詩を君と【改訂版】 (ページ25)

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八ページ25

『それにしてもあの捻くれ者の画伯をよく引きずり出せたものだな。一体何をしたんだいアルスラーン』
待機時間に気になったことを聞いてみる。
友人である私が見ても彼は偏屈で面倒な性格をしている。そう安請け合いはしない。
「え？いや…対したことはしていない。私の方から少しだけ地位を申し出ただけだ」
そうは言えどもアルスラーンの表情は微妙な顔をしている。これはもしかしすると…
『…まさかとは思うが、宮廷画家の位をやるとか言ってないだろうな？』
「何故わかった！？」
『…………おい、勘弁してくれ…』
頭が痛くなってくる。
でもアルスラーンらしいといえばらしい。主従関係というものを普通の王族ほど重視していないし、下の意見を尊重する。だから私はこの子が好きだ。
だからといってあいつに肖像画なぞ描かれたくはないけども。
『エラムも着いてきたのだね。ナルサスの事だから置いていくとも思ったが…』
「私が頼み込んだのだ。エラムは身の回りの世話に慣れているようだったし、私自身も彼の食事が気に入っている」
『あぁ…』
ダリューンとナルサスの野営での料理スキルを思い出して遠い目をする。壊滅敵とは言わないけど、料理が苦手なのだろうなと分かる出来だった。
「ナルサス様は基本何も出来ませんから、私が付いていくのは当然かと」
『はは、まるで母親だな』
クスリと笑うと、エラムは眉間にシワを寄せてしまった。年頃の男の子に母親というのは不味かったらしい。機嫌を損ねてしまったようだ。
「ペルール様はなぜ殿下へ着いて行こうと？」
『ん？それはだね。……！』
下で音が聞こえ、見やれば松明の明かりが揺らめいていた。
「カーラーンの隊が来ますね」
『どうやらおしゃべりはここまでのようだ』
「…うむ」

戦が始まる。