【アルスラーン戦記】月と詩を君と【改訂版】 (ページ22)

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再びシャビニカを走らせる頃にはあたりは茜色に染まり始めていた。
(夜になる前に合流したいな…少し急ぐか)
『シャビニカ、もう少し飛ばせる？』
「ヒヒン！」
シャビニカに鞭を打ち、足を早める。
カーラーンの奴が先に彼らを見つける前に私が見つけ出さなければ意味がない。

シャビニカを走らせてどのくらい経っただろう。
そろそろ夜が近い今、私は崖の上に居た。
ナルサスと思考を同じくするなら、この山岳地帯にアルスラーンはいる。
恐らくだがここでカーラーンをおびき寄せるのだろう。
(さてと。後は自力で探すしかないな…少なくとも麓にいないことはわかるのだけど)
と考えていた矢先、いきなりシャビニカが足をさらに早めた。
『っ、こらシャビニカ…！いきなり…！！』
まるで何かを見つけて嬉しそうにそこまで走っていく犬の様だ。
(何かを…見つけて……？)
ハッと前方に目を凝らす。
薄暗い中、さらに黒い人影を見つけた。
そこまで来てやっとシャビニカが興奮し始めた理由が分かった。
『ダリューン！』
「…！？その声、ペルールか！」
名を呼べば、彼もまた反応を返した。
近くまで寄れば、やっぱり黒衣の騎士ダリューンだった。随分と久しぶりに感じる仲間の顔だ。
なぜ分かったのか。それはシャビニカがダリューンの愛馬シャブラングをえらく気に入っているため、見つければ主の私のことなんて無視して突っ走ってしまうのだ。
本当、恋に生きる馬だなぁ。

「久しいな…というのには少し早いか」
『だが、そう感じるほどの事があったのだろう？』
ダリューンはまあなと笑った。本当に、色々あったらしい。
とりあえず、アルスラーンの元へ向おうということになり私達は移動をした。
着いたのは吹き抜けになった下を見下ろせる場所。そこにアルスラーンと男と少年がいた。
皆私の知っている顔ぶれだ。あぁなんだ、私の予想少し外れてたな。居るじゃない。
「殿下、ただいま戻りました」
「あぁ。ご苦労だった……ダリューン、その後ろにいるのは…？！」
帰ってきたダリューンに笑顔を向けたアルスラーンは私を見るなり驚いた。その横の男と少年もだ。
私はシャビニカから降り、アルスラーンの元へ。
『やぁ、アルスラーン。元気にしていたかい？』
ニコリと笑いかけると、アルスラーンは嬉しそうな顔をして私に駆け寄った。
「ペルール！」
その顔を見るのはいつぶりだろうか。