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十三 ページ14

『ほら、おいでカーラーン。死と隣り合わせの手合わせをしようではないか』
「っぐ…!」
いつの間にか距離を詰めていた彼女は確実に首を狙って剣を振るう。カーラーンも負けじと応戦をするが、小柄なはずのペルールの一撃一撃が重く、反撃にも出ることが出来ない。
『パルス民を殺し、慕われていた兵を殺し、同胞を殺し!それでもまだ己はパルス人だと!万騎長だとでもいう気か!甚だ可笑しい話だな!』
「っ、所詮ヴァフリーズの推薦で総都督になった青二才に何が分かるか!」
『そのヴァフリーズを殺し、繰り上がりで大将軍になった貴様に言われたくはないな!』
剣撃は苛烈を極め、カーラーンに加担しようとした兵は巻き込まれて死に、周りは屍の山と化していく。
カーラーンに付いて行った元パルス兵は見守る以外出来ない。改めて万騎長総都督の力をまざまざと見せつけられた気がするのだ。
「苦戦しているようだなカーラーン」
『!』
突然後ろから迫る気配にペルールは背にあるタガーナイフを抜き、後方の攻撃を受け止めた。
攻撃を仕掛けたのは銀仮面の男。
「ほぉ、受け止めるか」
『…お前も相手してくれるのかい?』
「貴様、名を名乗れ」
一度距離を置くと、男はペルールに剣先を突き立てる。仮面の奥の瞳は興味の色が伺えた。
『万騎長総都督ペルール。教えたからには、名乗るのが同義だろう?』
彼女が名乗ると男は口元を歪めさせ、仮面に手をかける。
「ペルールだと…?はっ、ははっ!そうか!ペルールよ教えてやろう!この名と顔に覚えがないと言わせん。我名はヒルメス!父はオスロエス。先王オスロエスだ!」
その名にペルールは聞き覚えがあった。
それは幼い頃の記憶だ。故郷にて、同じ名の王太子が父王と共に視察に来ていた。
けれど“そんなもの”どうでも良かった。
『ほう、ヒルメスか。死んでいるとばかり。……成る程、カーラーンの裏切りはこういうことか』
「あぁ俺も死んだと思っていた。だが俺はここにいる。真のパルスの王になるためにな」
ヒルメスはペルールに近づき、仮面を外す。火傷で爛れた右目と肌。
『あの無邪気な笑顔がこのザマか。王族とは下劣で、外道、自分の事しか考えない』
ペルールは恐れもせず火傷の部分に触れた。
「ペルールよ。俺の元につけ」
『断る』
触れていた手を離し、彼女は言葉で突き放した。
『ヒルメス、感動の再会でもしたければ他を当たるといい。私もお前も随分変わってしまった』

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設定タグ:アルスラーン戦記 , ギーヴ , 改訂版   
作品ジャンル:恋愛
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作者名:春月 | 作成日時:2020年8月18日 19時

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