外伝集 (ページ38)

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【赤髪】下絵 Ⅰ ページ38

-物語が始まる前の話-

「宮廷画家?」

「あぁ。名をサクと言って、クラリネスの人気画家で、うちのお墨付きもついていてな。まあ色んな縁があって、ここにいるんだ」

とある日
ゼンに呼び出され、王宮へと赴いた白雪
要件は、大したことではなく、ゼンの息抜き相手として彼の側近たちが呼んだという
息抜きついでに出た話題が、クラリネス王国のこの王城のお抱え画家。サクの事だった

「サクさんの作品、結構見るんだけど、まさかクラリネスの人だったとは…あ、タンバルンで開いてた展覧会も行った事あるよ」

「お、運がいいな。あいつが展覧会を開くことなんてあまりないからな。面倒だなんだって言って」

「へぇ、そうなんだ!」

『本人の前で陰口?』

「「おわっ!?/きゃっ!?」」

サクの話題で盛り上がる二人の突然声がかかる
その人物は、話題の中心の人物だった

「お前な、驚かすな!」

『気配に気づかない王子が悪い。というか、ここ僕の定位置だろ』

「ん?あぁ、そういえばそうか。それはすまん」

二人が語らいの場として設けていたのは、広い草原と心地よい風が吹く中庭
ここは、今ゼンの目の前にいる彼女の、宮廷画家サクの作業場所の一つだった
サクは手に持っていた画材類をその場に置くと、ゼンから白雪へその黄金の瞳を向けた
心なしか、その色は輝いている

『で?そちらの麗しき紅玉のご婦人は?』

「へっ、うるわっ」

「綺麗な赤だろ。こいつは白雪。俺の友人だ。で、白雪、こっちがさっき話してたサク」

サクの言い回しに白雪は赤くなるが、ゼンから紹介された人物こそがサクであるとそれもおさまった

「へっ、あの、サクさん…!?」

『想像とは小柄で無愛想って?よく言われる』

「いやいや、まだ何も言ってないんですけども」

『そんなことより、君ーー…』

サクは自分のことを流し、白雪に、白雪の髪に指を通す
短い赤髪は、サクの細い指から逃げて行く

『美しい』

「へっ」

そこからのサクは、先ほどとはうって違い、よく舌が回った。どこから出てくるんだというほどの美辞麗句。彼女としては全て本心の言葉だが
ゼンが止める隙を与えずに無表情で口と目と手を動かす様はまさしく変人
この状態のサクに慣れているゼンは段々と面白そうにその光景を見るようになって、気づいた

(サクの、表情が)