外伝集 (ページ17)

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【スタミュ】バレンタインページ17

※この物語はフィクションです。本編とは関係のないものとなります

色めき合う日、バレンタイン
俺には関係ない日だと思っていたのに

『人は変わるもんだねぇ…』

生地を型に流しながら、苦笑する
学校が終わった後、現在稽古をしている想い人のためにバレンタインのお菓子を作る
なんとまあ女子らしいことをしてるなぁと思う

『ま、あいつはこの後デートなんだけどね』

当然のごとく今日は朝まで帰って来ないだろう
赤トラの性分はわかっているから、嫉妬とかいう感情じゃなくて、呆れに近い

(日頃の感謝だって言えば平気かな)

あいつが甘くてくどいのは好きじゃないからバナナケーキにしたのは内緒

『これで後は焼くだけだな』

予熱したオーブンに型を入れて、時間まで待つ
どちらにしろ俺もこの後はレンちゃんの誕生日パーティーに行くから顔は合わせない

『あくまで義理…ってね』

さぁて、出かける準備もしなくては

ー・ー・ー

『ただいまー…っと』

そろそろ0時を回る頃に寮に帰宅
部屋のドアを開けると電気がついていた

「遅い」

『あれ…?』

いないと思っていた姿がそこにあった

『なーんでトラッシュ君がいるのかな』

「逆になんでいないと思ってんだよ。俺の部屋でもあるんだからいるに決まってるだろ?」

『いや、そうじゃなくてだな。今日は朝帰りじゃないのかな虎石少年』

今日の朝、確かにそう言っていたはずなのだ
なのに何故

「あー、それな、キャンセルした」

『………熱でもでた?』

「なんでだよ。至って健康体だっての」

トラはソファから立ち上がり、こちらに向かってくる

「あんないじらしい手紙渡されて、キャンセルしない方がおかしいだろ?」

『いや、そんなの渡してな……』

言い切る前に目の前に書き置きとして残した紙が掲げられる

"ハッピーバレンタイン
日頃の感謝を込めてバナナケーキを作りました
和泉、いつもありがとう
哀葉"

一見なんの変哲もない普通の文

「ここ。修正機で消したろ」

『っ…』

ドキリとする。バレていた
文の中に紙と同色の修正機で消した字がある
上から書いたからバレて無いと思ったのに

(そう、本当は)

"和泉、好き"

『なんで見つけるかな』

「哀葉の愛が教えてくれたって言ったら?」

『バカトラ』

「…今日の埋め合わせ、しろよ?」

『さぁ?どうだろう』

優しいキスは、少しだけバナナケーキの味がした