今一度 ページ18
その夜
私はギーヴに呼ばれ、彼の部屋を訪れていた
『急にどうしたの?』
「まあ細かいことは気にするな。ほら、来い」
ソファに座る彼が手招きするので素直にそちらに向かうと当然のようにギーヴの膝の上に乗せられた
『ちょっと』
文句を言おうとしてふと気付いた事があった。私を支える彼の腕が微かに震えていたのだ
『……ギーヴ?』
「ここから先、気を抜く機会が減るだろ。お前がもう平気だと言っても俺はそうは思わん」
話しているのはペルールの事だろう。平気だと言っているのに過保護な人だ
『私が、倒れるとでも思ってるの?』
「自分の妻の心配をしない男がいるか?溜め込みやすい性格だと分かっていれば尚更だ」
いつも飄々としていて堂々としている人なのに、私に何かあるかもしれない事がそんなにも怖いのだろうか
「だからこそ、今一度告げるぞ。ルナ」
『へ…?』
見上げた先にある彼の表情は、いつか見た少し緊張しているような
「我が女神、我が月。俺は生涯お前だけを愛す事をお前に誓う。…いや、死しても尚、お前だけが俺の唯一の女だ」
『──…』
「この俺に、ここまで言わせた女はお前だけだ。その事をゆめゆめ忘れるなよ?ルナ」
ギーヴはそう言って何かを取り出して、私の首に手を回す。シャラリと音を立てたのは、彼の瞳の色を切り取ったかのようなアクアマリンがはめられた、月のモチーフの首飾り
『……これ』
「お前がくれた婚姻の証。片方だけでは不公平だろう」
『で、でもっ、こんな高価そうなもの…!んっ』
貰えないという言葉が唇で呑み込まれる。返却は受け付けないという事らしい
そこでようやく納得がいった
さっきの震えも緊張も、心配からではなくて、私に二度目の婚姻の申し入れをするからだった
(……バカな人)
こんな事しなくても、もう離れられないのに
でも愛おしくてしょうがないのも確かなんだ
『は……ギーヴ』
「ん?」
『好き。大好き。私が貴方の月なら、貴方は私の詩だね』
今度は私から唇を贈れば、彼は嬉しそうに笑みを見せる
「嬉しい事を言ってくれる。ならばそれ相応の対価を渡さねばな」
『もう貰ったよ?』
「いや、それでは足りん」
ギーヴはそう言って、私を抱き上げて寝室へ向かう
それが意味するのは一つだけだろう
「俺の全てで、お前を愛すしかないだろう」
妖艶に笑うギーヴに、私はそっと腕を回すのだった
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奈那 - 完結おめでとうございます！最高のギーヴの夢小説に出会えて幸せです♡こっちが本当のアルスラーン戦記であって欲しかった…。春月様のこれからの作品も楽しみにしております！ (2023年2月8日 16時) (
レス) @page22 id: baac7d2864 (このIDを非表示/違反報告)
乱中 久(プロフ) - こんばんは。完結おめでとうございます。春月様のギーヴには毎度ドキドキさせていただき、更新が楽しみでなりませんでした。番外編や次回作等、これからの春月様のご活動も応援しております。 (2019年6月4日 20時) (レス) id: d74e0e0202 (このIDを非表示/違反報告)
シルバーウルフ - 今度はメルレインメインの小説が見たいです。(*^O^*)o(^o^)o (2019年5月30日 20時) (レス) id: 769a4deb70 (このIDを非表示/違反報告)
まっちゃのべる(プロフ) - はじめまして。以前から楽しく読ませてもらってました。完結おめでとうございます。かってではありますが、またギーヴのお話を書かれることを、楽しみにしています。 (2019年5月29日 21時) (レス) id: 7753f34fb2 (このIDを非表示/違反報告)
林香織(プロフ) - 春月さん» 本当に長い執筆お疲れ様でした！ありがとうございます！Twitterの方でセブンにて販売すると仰ってたので、買いに行きたいと思います(*^^*) (2019年5月29日 16時) (レス) id: 3baa06326a (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：春月 | 作成日時：2017年9月27日 10時
