【アルスラーン戦記】月と詩が導く先

理解するもの ページ46

出会った当初は、彼の思考が分からず振り回されて居たけれど、十年に近いほど一緒にいればどんな時にどんな事を考えているか把握できる
何より、悪巧みの場合は悪い笑顔を浮かべている。そりゃもう分かりやすく

(流石に軍勢において講じた策の全てを分かり切れる訳ではないけど)

天才軍師と言われるような頭脳の全てなど分かっていたら王都は落ちていない
皮肉だけれど

「おい、お前今いらんことを考えただろう」

『ははっ、さてな』

「全く…エラム、これを明日の朝、ギランの町に広めてくれ」

「分かりました」

ナルサスはエラムに紙切れを渡す。ペラギウスの解任と税金を返すという触れを広めるのだろう
ペラギウスと違う政治をしなければ、アルスラーンの味方が集まらない

『さてと…私はシャガードの屋敷に寄る。すぐ戻るが』

「!お前一人でか?」

『大人数で行っても仕方がないだろう。まあ、そこらに証拠があるならこんなに苦労はしないだろうから、行ったところで無駄足だが』

まあ、揺さぶるのには持ってこいだろう


(さぁてと…まあそう簡単に見つかる訳ないけどね)

書簡の保管場所をざっと見ても、普通の取引状や在庫確認表ばかりだ
海賊との繋がりの手がかりなどこれっぽっちもない

「誰かいるのか?」

(!!)

思ってたよりも早く、シャガードがこちらに来た

「まあ、誰かなど分かっているがな。ペルール」

『やぁシャガード。朝からずっと姿を見ていなかったが…一体どこにいたのやら』

笑顔を貼り付けているのはどちらも一緒
それを崩す気がないのも勿論のことだ

「俺とて暇ではない。お主ら友人が来たとしても、仕事はあるのだ」

『ははっ、すまないね。周りがアルスラーンを中心に動いてしまっているから、どうも感覚が鈍くなったらしい』

「相変わらずの殿下一筋か……ところで」

シャガードは私に近づき、その両腕で逃げ場をなくす
あまり意味がないことは彼も分かっているだろうが

「何故ここにいる?ここはお主にとって価値などない情報ばかりだろう」

『その町の状況理解は、私にとって重要な仕事の一つだが?忘れた訳ではないだろう?私が誰か』

「あぁ理解しているさ。万騎長総都督殿。だがなルナ、お前も理解するべきだぞ?お前が女である事をな」

『!!』

シャガードが私の手首を押さえつける
おやまあ、これは予想外

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