【アルスラーン戦記】月と詩が導く先

総督の末路 ページ45

ペラギウスの尻尾がつかめたとのことで、謁見の間に足を運ぶ
縄で縛られたペラギウスはいるが、まだアルスラーンは不在だった

『無様だな、ペラギウス』

「ペルール殿…ッ」

彼は私を睨みつけるが、私にとっては微塵も効かない
知らん顔でアルスラーンが来るのを待つ

『そうだ。何もされなかったかい?ファランギース』

「無論じゃ。私が後れを取るとでも思っておるのか」

『これは失礼した』

それでも心配なんだって、彼女は分かっているのだろうか
彼以上に彼女の相手が務まる人なんていないのだから、彼を超えられる人が現れるまでは誰にも渡せないし、渡す気なんてない

『ファランギースは…』

「なんじゃ?」

『いや、何でもない』

これ以上は野暮になってしまう

程なくしてアルスラーンが謁見の間に現れる
ファランギースとジャスワントからの報告を受けて、ペラギウスの処罰が下されることになった
アルスラーンへの背信の意を表した彼は、総督の解任間違いなしだろう
だが彼も食い下がる。民の税を着服した証拠はあるのかと
勿論、抜かりはない。その証拠を探すべく動いていた男がいるのだから

「証拠ねぇ。こいつの事かい?」

ギーヴが持っている書簡を見て、彼は動揺する
あたかも自分のですと言っている様なものだ

「そ、それをどこで…!?」

「あんたのそば付きのお嬢さんに頼んでね。ちょいと貸してもらったのさ」

つまり口説いたらしい。まあ概ね想定内だ

「あ、あの女官めぇ…!絶対に誰にも見られるなと…!!」

「政権王ジャムシードの法と理によりて塵芥の悪を裁く。せこい悪でも目の前にあれば放っておけぬのでな」

「ギラン総督、ペラギウス。王都の混乱に乗じて私腹を肥やすお主の悪行、このアルスラーンがしかと見届けた。よって、お主をギラン総督から解任する」

こうして、彼の総督の任は解かれた。これからこのギランは変わるだろう。良い方向へと

(さて、残る問題は…)

まだシャガードの件が済んでいない。簡単には尻尾を掴ませてくれないのは分かっていたが、私たちがこの町に来たことによって彼が動かない筈がない

(近々仕掛けてくるだろうか)

「ペルール。少しいいか」

ふとナルサスに呼ばれる

『なんだい?着服した税の民への返還ならお前一人で出来るだろう』

「…やはりバレたか。お前には概ね俺の思考を読まれているようだな」

『何年一緒に居たと思ってるんだい?全く…』

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