【アルスラーン戦記】月と詩が導く先

その名は ページ42

ダリューンと私の強さを目の当たりにした彼らではあるが、まだ攻撃をやめない

『ははっ、クズどもが良く頑張る』

「ペルール、背中は任せたぞ」

『だからお前の背は荷が重い……っ!!』

上から死体が落ちてくる
どうやら上から狙われていたらしい
助けてくれたのは、体躯のいい褐色の男だった

「な、なんなんだお前たちは!」

震え上がる海賊たちにギーヴが語る

「お前達!この男が誰だか知らないで剣を向けていたのか?この男こそが、パルス最強の戦士。万騎長ダリューンだ!」

「だ、ダリューン…!?」

「そして、この御仁こそ、ダリューンさえもまとめる、万騎長総都督ペルールであるぞ!!」

『おや、ファランギースも悪ノリするのかい』

「ペルール…!?」

海賊達は震え上がり、尻餅をつく奴らもいた
この名前を知らない者はパルスにはいないようだ

「お前らどうする?」

ダリューンの睨みで海賊達は海へと飛び込む
まあ賢明だろうとは思うが

「お主な…」

「手間が省けたろ?」

『ファランギースもなんでギーヴに乗るかな』

「なんじゃ?この方が効率がいいじゃろう」

それはそうなんだが
そのイタズラ精神をここで発揮しないでもいいだろうに

『そうだ。ここの船長は誰だ』

「あぁ、俺だ」

手を挙げたのは先ほどの褐色の男だった

『お前か。先ほど助けてもらったな。礼を言う』

「礼を言うのはこっちだろう。まさか噂に聞いていた総都督様がこんな小さいとは思わなかったがな」

『よく言われる。改めて、私は万騎長総都督ペルールだ』

「俺はクラーゼだ。この商船、"勝利"の船長でもある」

手を差し出されたので、握り返す
すると彼は何を思ったのだろうか、そのまま腕を引っ張り、私を抱き上げた
子供にする高い高いとも言うのだろうか

『っ、何をするんだい!』

「はっはっはっ!軽いなぁ!総都督様ってのは!」

『おい!!私を子供か何かだとでも思っているのかい!?』


「ファランギース殿、あの男一発殴ってもいいか」

「阿呆。そんなことしたら恩を売った意味がなくなるじゃろう」

「ルナに触れるなど、生かしておけん」

「お主、その独占欲どうにかならんのか」


「そうだ。あんた達酒はイケる口かい?お礼と言っちゃなんだが是非一杯奢らせてくれ」

『その前に私を降ろせーー!!!!』

そんなこんなで、なんとか助けた商船は無事に港へと戻ったのだった

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