【アルスラーン戦記】月と詩が導く先

分からせるには物理で ページ26

『だから何度も言ってるだろう。理解出来ないほど無脳ではないだろう?お前は』

「いや、しかしだな…!?」


「かれこれ半時ほど同じ会話をしていないか?あやつらは」

「まあ無理もないじゃろう。約十数年ほど、男だと思っていた奴じゃ」

後ろの方でナルサスとファランギースが呆れているのが分かる
男装をせずに、元の女の姿で出ていくとやっぱり驚かれた
けれど、エラムやジャスワントはすぐに理解してくれたし、アルフリードもなんとか納得してくれた

けれど問題だったのは

「信じられるか!ペルールが女だったなんて!」

案の定ダリューンだった

『はぁ…まあ無理もないだろうが、少しは私の言うことを信じてくれ…』

「なら、お前がペルールである証拠はあるのか!?」

『証拠、ね』

昔話で納得してくれるような男ではないだろう
だからこの場合は

物理で

ガシッ

「!?」

『いい加減に、しろっ…!!』

ダリューンの胸ぐらを掴んで、足払いをし、背負い投げ
普通の女では出来ないことであるし、私はダリューンを何度か投げ飛ばしたことがある
これで理解してくれると助かるのだけど

「………」

『どうだい?これなら流石にわかっただろう?』

「いやペルール、流石に投げてもこの馬鹿はわからな…」

「この投げ方、力…まさしくペルール…!!」

「「……………」」

『そうかいそうかい。やっと理解してくれたようで何よりなのだよ』

ナルサスやエラムが何か言いたそうにしている
言いたいことはわかる。けれど何も言わないで欲しい

「…だが、本当に女だったとはな…今まで投げ飛ばしたりだのすまなかった…」

『ははっ、今更謝ることもないだろう。寧ろこれからも今まで通りの接し方で居てくれると助かるのだが』

今更、女扱いもむず痒い
なら普通に接してもらいたい

『エラムもジャスワントもアルフリードもな。面倒だろうが、そうしてくれ』

「大丈夫だよ。寧ろ、ペルールが女であたしは嬉しいよ!」

「俺は別に気にしていない」

「ペルール様が男であろうと女であろうと、尊敬の意は変わりません。…ただ」

『…?』

エラムは言いにくそうに視線を彷徨わせる

「……怪我の時の口移し、不可抗力とはいえ…忘れるのには少し時間を要するかと…」

『あ…』

それはエトワールに刺された時のだろう
確かに相手が女だとすると、居心地が悪い

「…ルナ?」

『…』

「口移しとは…なんの話だ?』

とりあえず後ろを振り返ってはいけない気がした

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