【アルスラーン戦記】月と詩が導く先

ナルサスの手中 ページ18

まるで頃合いを見計らっていたかの様に、帰ってきた二人に他の者も呆れながらも笑っていた

「おのずと注目を浴びてしまう…俺はそういう運命の元に、生まれてしまったらしい」

『女神に愛されているのも考えものというわけかい?戯言だね』

「ペルール卿、そうやって横槍を入れるなと言っているだろう」

夫婦漫才にも聞こえる言い合いに、アルスラーンは別の意味でも嬉しそうにしていた

「貴様、ギーヴとペルールと申すか」

再び馬に乗ったトクトミシュが問う

「ただのギーヴではないぞ。上にちゃ〜んと、「正義と平和の使者」と付く」

「戯言を」

「気に入らんか?それなら、「美女には愛を、醜男には死を」としてもよいが?」

『…ギーヴ、お前はまたそうやって…』

ペルールはため息を吐く以外他なかった
そんな態度のギーヴにトクトミシュは兵に命を下すが、それより先にダリューン達が付くのが早かった

「さて、トゥラーンの王よ。お主らが揚々と出撃させた別動隊だが、まんまと返り討ちにさせてもらった」

ナルサスがいう別動隊とは、嘘の情報に踊らされパルス兵を撃とうとしていたもの達のことだ
まさかそれが、同士討ちになるとも知らずに

踊らされたトゥラーンの兵が悪いのではない。そのために本陣を手薄にした王が悪いのだ、と

「おのれ、突撃じゃ!」

トクトミシュはそう命じる
けれど戦況は圧倒的にパルスが有利に立っていた

『王が暴君だと、こうも崩れるとは…トゥラーンは我が国と変わらんなぁ』

「そういうな。次期国王はアルスラーン殿下になるだろう」

『…違いない』

ギーヴとペルールは背を預けて、戦う
一緒にいる時間が長かったため、互いの癖がわかり始めていた

程なくして、トゥラーン軍は撤退して行った

「勝どきを上げろ!」

「「おぉー!!」」

こうして、此度の戦はパルスの勝利に収まった
ナルサスは策を講じていたのを黙っていたこと、アルスラーンに詫びる
けれどアルスラーンはナルサスの性格を分かり切っている。敵を欺くにはまず味方からという手法を持ってくるなど今更驚きはしない

「まことその通り」

そこにギーヴとペルールが会話に入る

「怯むことなく、ご立派でした。殿下」

『見ない間にまた一段と男前になったではないか。お前の成長は目覚ましいね』

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