#43 ページ44
｢どしたの｣
『ううん、なんでもない』
｢なんでもなくないじゃん、普段と違うし｣
『………』
図星なんだ、きっと。
きっと、言葉にできないもどかしさと勝負しているのだろう。
頼れよって言いたいけど、あまりしてこない。
頼り方が分からない訳じゃないはず。
スキンシップもそう。
あまりハグをするタイプでもされるタイプでもないし、手を繋ぐことも、あまり求めない。
嫌がるならそんな無理してしなくてもいいとは思っているんだけど、今が、ね。
心配になっちゃうじゃん。
シャカッと、ジャージの服と服が擦れる音がした。
左を見れば、同じ向きに直ってる。
2人して、同じ向きの同じ座り方。
誰かが来たら、｢何してんだお前ら｣って言われそう。
｢どしたの｣
『………ふあんなの』
｢不安？｣
『うん』
今にも消えそうな声。
顔は俯いて、様子を見られないように下を向いている。
『……不安なの』
｢うん｣
『誰の力にもなんないし、頼りになれんし』
｢そんなことないと思うけどな｣
『たまに、イヤになる』
｢うん｣
『どうしたらいいかわかんないの、……苦しいの』
｢俺らに言えば…｣
『分かんないから、言えへんの』
最近気になっていて、今気づいたこと。
少し堅かった話し方は緊張感が取れ、親の影響を受けた関西弁を聞くようになった。
それでも、こいつは。
何かに対して我慢している。
我慢しながら、ずっと俺らとの空間にいる。
『……もう大丈夫、心配せんで』
Aは立ち上がり、小さい財布を取り出して部屋を出ていった。
なんで。
なんで俺が、悲しい顔をしないといけないんだよ。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 311人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を含むプレイリスト 
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：harutomo | 作成日時：2023年11月9日 8時
