#19◇ 油断禁物。 ページ20
＜青 side＞
レッスン日。
レッスン室の部屋の貸出をするために、事務室に寄って。
書類を書いて提出しようとした時、
｢(……なんだ、紙切れ)｣
腰くらいの高さまである棚と棚の間に、何かの拍子で落としてしまったっぽい紙切れ。
四つ折りにされた状態で挟まってる。
ぺら、と紙を拾い上げ、開いてみる。
【野田】と書かれた紙。
僕らのグループ活動を支える一社員の野田くん。のメモ。
僕らは｢野田ちゃん｣なんて言ったりする。
どうやら俺と雰囲気が似てるみたいで。
｢野田、ちゃ〜ん……｣
紙落としたよ、って言いたかったけど、そこには知らないことが沢山書かれていた。
【Aについて By母親】
・音を聞きわける耳はいいが、聴覚過敏。60Hzショッピングセンターで聞くような音から聞き分け不可。→特効、雷は基本無理。耳塞いで自己防衛。イヤーマフ必須。
・聞いたことをすぐ忘れてしまう時がある。基本、家では視覚的に物を伝えている。
・視覚的に物事を伝えているからなのか、見たことはよく覚えている。→昔見た映像を鮮明に覚えてるかも。
・好きなことにはものすごく没頭する。こだわりを持ってしまうので声をかけて終わりを見せないといけないが、すぐ忘れる。上2つ目に流れていく。→根気よく伝えればいいが、手をかけるわけにはいかない。
「野田ちゃん、これ」
野「あ、ごめーん」
「ごめんじゃないよ、これ」
野｢え、ウソ…待ってそれ」
声をかけ、野田くんに紙の存在を見せるとかなり焦っていた。
その顔は、見てしまったのかと訴えるような目をしている。
野「これ、見た？」
「落ちてた… というかここに狭まってたけど」
野｢見た？」
｢見たかと言われれば、見た」
野「…ああぁ」
「落とした野田ちゃんが悪いんだよ？｣
野｢…黙っててごめん、Aちゃんのこと」
紙の中身のこと。
それは、Aが嵐になって直ぐの頃、お母さんと話をしたという話で。
2004年当時、僕らをマネジメントしていたマネージャーと、社員、両親とでAの特徴について話し合ったらしい。
野｢……時間、ある？」
「…一応」
野｢外のカフェで、話したい」
「…ん」
野｢ごめん｣
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作者名：harutomo | 作成日時：2023年11月9日 8時
