62,夢と現|薬研side ページ12
.
今日の目覚めは、久しぶりに良いものだった。
不安や悲しみが薄れたこの空間で
誰一人欠けることなく、兄弟みんながこの部屋で寝ている。
いち早く目覚めた俺はそんなことを思っていた。
「(腹の傷も、いつの間にか消えている…)」
審神者を部屋に送った後
不覚にも俺はあの場で寝てしまったのかもしれない。
審神者部屋にいたはずなのに、目覚めたら部屋で寝ていたから
おそらく心配したいち兄が運んで来てくれたのだろう。
「(まさか審神者部屋で寝ちまうとはなぁ)」
昨日までは考えられないことだった。
今でこそ綺麗になっているが、以前は酷いものだった。
あそこには誰しも入りたくないと思っていたが
寝てしまうほど、今の部屋は居心地が良かった。
傷が癒えたのもそのおかげかもしれない。
……霊力放出で、また倒れなきゃいいが。
.
「あ。おはよう、薬研くん。今日は早いね」
「おはよう。いっぱい寝たからかもな。朝餉の支度、手伝うぜ」
「ありがとう。
そういえば、昨日は審神者部屋で寝ちゃってたね」
「ん?見てたのか?」
燭台切が食材を切っている隣で俺は味噌汁の準備に取り掛かる。
食材を持った俺に、燭台切は昨日あったことを話してくれた。
「薬研くんの後をついて行ったからね。
審神者部屋に入ったら、二人とも寝ていたんだよ」
「あぁ、そりゃ悪いことしちまったな」
「全然。君も疲れていたんだろう?」
“お疲れ様”
と、食材を切る手を止めて、燭台切は俺の目をしっかりと見た。
「……あんたもな」
「ふふ、ありがとう」
そんなことはお互い様だろう。
知っていても尚
自分以外を優先する燭台切はどこまでいっても優しいやつだ。
「…あの人が起きた後、上に乗っかってた薬研くんを彼女が布団に入れていたんだけど…」
しばらく間を置いて話し始める燭台切。
しかしその言葉に少しばかり驚いてしまった。
「…上?…まさか俺は、審神者の上で爆睡しちまったのか?」
「あ、えっと……、うん。そうだよ」
“話していなかったか” と、笑いながら俺に伝える。
「その人ね、薬研くんを布団の上から撫でていたんだ」
「撫で、た…?」
「触れられていなくても伝わったよ。
彼女の優しさと、霊力が…」
__ここまで運んでくれてありがとうございます。
俺はあの日、夢を見た。
あれは審神者が
俺を優しく撫でている夢だった。
2838人がお気に入り
この作品を見ている人にオススメ
「刀剣乱舞」関連の作品
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
チョコミント - こんにちは。この作品の独特の世界観が好みで続きを読めるのを楽しみにしていたのですが、移動先は読めそうにないとこなのでとても残念です。
移動先でも更新頑張って下さい、応援してます。
無事の完結を願ってます。 (2021年3月19日 14時) (携帯から) (レス) id: 4f4058a2da (このIDを非表示/違反報告)
ta0628tm0105(プロフ) - めっちゃ面白かったです!続き待ってます! (2020年4月12日 22時) (レス) id: 0ed1a1911f (このIDを非表示/違反報告)
青碧(プロフ) - 黒羽ひみとさん» こんにちは!この作品を待ってくださってありがとうございます…!更新できるくらいには元気に生きております!笑 お心遣いとても感謝です。お互い強く生きましょうねv (2020年4月11日 15時) (レス) id: 5415801c28 (このIDを非表示/違反報告)
黒羽ひみと(プロフ) - 更新ありがとうございます!待ってました。世は大変ですが、青碧さんは大丈夫でしょうか?体調の方には充分気を使ってください。続きを楽しみにしています。 (2020年4月9日 23時) (レス) id: 451dd01b35 (このIDを非表示/違反報告)
葵(プロフ) - とても面白いです!ゆっくりでいいので更新頑張ってください! (2019年5月21日 16時) (レス) id: 4da4b68b81 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:青碧 | 作者ホームページ:
作成日時:2018年6月26日 23時