第三章『鬼の居ぬ間に帰省は出来ず』 ページ43
季節は夏真っ盛り。
つい先日、親元を離れて新生活を始めたと思っていたのに月日が経つのは存外に早い。大学は現在夏休みに入り、Aは正に『夏休み』と呼ぶに相応しい悠々自適な生活を謳歌していた。
ちなみに現在時刻は昼過ぎである。Aはエアコンの効いた相談所の一室で、アイスを食べていた。
｢いやー、冷房の効いた部屋でアイス…最高だなぁ｣
しみじみと独り言を呟く。
｢それだけの為に、バイトのない日までウチに遊びに来るのはどうなんや？｣
机の向こうから呆れ声が返ってきた。声の主はトントンだ。彼の目線は、手元のパソコンに固定されたままである、カタカタとキーボードを叩く音が続いた。
｢良いじゃないですか、何時でもここのエアコンはついているんだし、私が来ようが来まいが電気代は変わらないでしょう？｣
｢ホンマに口が回るようになったなぁ。最初の頃のだんまり加減はなんだったのやら｣
Aがこの相談所でバイトを始めてから、早いもので数ヶ月が経過していた。グルッペンの最初の提案通り、待遇は申し分なく無理なシフトを頼まれることもなかった。相談所を訪れた依頼人の話をグルッペンやトントンに付き添う形で聞き、依頼に応じてはツーマンセルを組み現場に赴くといったルーティンが出来つつある。もっぱらAは交渉役や雑用である、先の一件以来危険な目にもあっていない。
と、エレベーターの駆動音に続いてこの階で止まる音と、事務所の扉が開く音がした。
｢ただいま！！って、A、ええモン食うとるやないけ！！ワシの分は無いんか！！｣
｢コネシマうるさい。…戻ったぞ。全くもって暑すぎる、もう二度と外に出たくない…｣
帰ってきたのはコネシマとグルッペンだ。ヨボヨボとした足取りでグルッペンがソファに向かい、背負っていたリュックをほおり投げるとそのままソファにボフッと沈みこんだ。なるほど、体力を根こそぎ持っていかれるような暑さだったらしい。
｢お疲れ様です。今麦茶持ってきますね｣
そう言うと私は給湯室に向かい、コップを4つ用意し、気持ち氷を多めについで麦茶を注いだ。その後棚を物色し、茶菓子になりそうなものを漁り部屋に戻った。
｢はーい、皆さん水分補給しましょうねー。こっちはコネシマさんご希望のアイスです｣
それぞれにお茶を配る。ソファで半液体になっているグルッペンにも手渡し、コネシマにもアイスを手渡した。
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らりるれろん(プロフ) - 一番右のお星様をポチッとさせていただきました。神ですね、好みドストライクでした。参考にしている作品が何かは分かりませんでしたが、これからも読ませていただきます。長くなりましたが最後に、応援してます、頑張って下さい！ (2020年7月11日 20時) (
レス) id: 2108271c54 (このIDを非表示/違反報告)
鶏太郎(プロフ) - くろちゃさん» くろちゃさん、コメントありがとうございます！性癖に刺さったようで何よりです！亀更新ではありますが、のんびり待っていただければ幸いです…！！ (2020年7月3日 22時) (レス) id: 10d9e4ee33 (このIDを非表示/違反報告)
くろちゃ(プロフ) - コメント失礼します！私の好みドストライク...（）これからも楽しみにしてます！！！ (2020年7月3日 9時) (レス) id: 55e077543a (このIDを非表示/違反報告)
鶏太郎(プロフ) - きのこ教３さん» きのこ教３さん、コメントありがとうございます！共感していただき感激の極みです！！おお！心当たりの作品があると！…存分にニヤッとしておいてください笑！！！ (2020年7月3日 1時) (レス) id: 10d9e4ee33 (このIDを非表示/違反報告)
きのこ教３ - あと参考にしてる作品・・・もしやあれでは？と思うモノ知ってますよ。面白いですよね、あれ (2020年7月2日 22時) (レス) id: 9184950dc8 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：鶏太郎 | 作成日時：2020年6月29日 15時
