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また十六つ ページ16

「ふあ、あ…」

「A、寝不足?」

「そう。昨晩、有一郎の初討伐でね」

なるほど、と頷いたしのぶが呆れたような顔をする。
どうせ親バカとでも言うんだろう。
…自覚はある。

「なんだか、そうやってAが誰かに心を揺らされている様は不思議ね」

「うーん?私、割と感情豊かよ?」

「どの口が…」

確かに、前世の幼少期は感情も表情も乏しかったけど、鬼殺隊に入ってからは笑顔でいたと思うけど。
そのあと、そのあと。
無一郎くんと出会って、恋をして、色んな感情を知った。
甘くて、苦くて…

「無一郎くんの記憶がないと知って、どう思ったの?」

「どう、かぁ…良かったと思ったかな。空っぽの彼を見るのは辛いけど、あんな光景覚えてるよりかは幸せなのかな、と」

兄が死んで、死に物狂いで刀を握って、しまいには腕を斬られて…
どれだけ痛かっただろう。
心が、体が。

「それよりも、あなたが…」

「私が?」

「…いえ」

しのぶが力なく首を横に振る。
その目が寂しそうに揺らいだ。

「私は、まだAの恋を応援してるから」

「…終わったものだよ?」

「いえ。きっと、消えることはないですよ」

終わる、を消えると言い換えたしのぶが悪戯にウインクを飛ばした。

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作者名:演狐 | 作成日時:2022年3月5日 17時

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