また十二つ ページ12
「ってことなんだけど…どうにかならない?」
「あなたッこうゆーときだけ頼ってきて!」
ほっぺをつねられる。
しのぶの長い爪がグサグサ刺さって痛いが、代弁の余地もないので我慢。
「紗奈はまだまだココが足りない」
胸元をトントンっと指先で叩くとしのぶがため息をついた。
「カナヲが本当に感情を見せたのは私が死にかけた時です。あまり役に立てるようなことは…」
「私も恋なんて、教えらんないし…」
「ああ、彼はどうしたんですか?無一郎くん」
すべてを見透かすような瞳に苦笑いで返す。
「あの人は私のことなんて見てないでしょう」
記憶を失っていた頃みたいにぼーっとしている彼を見るのは少し辛くて。
でも世の真理だから、受け止める。
「しのぶは?また義勇くんと?」
「今世はまだ教師と生徒なので…それに、何か縛られているようで、どうなのかな、と」
難儀だなぁとしのぶを見る。
関係も、今惚れているのは過去の延長上か、それとも今の彼なのか。
そんな風に悩んでいるらしい。
「ふぅん…まあ小芭内さんも蜜璃さんも、今世だって夫婦でいるし、カナエさんも実弥さんもそう。今世もって人が多いわね」
そうやって苗字が変わるから皆んな名前で呼び始めるような今世。
「まったく平和なことでなぁ」
少し緩くなった缶ジュースを口に含む、そんな今日この頃。
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作者名:演狐 | 作成日時:2022年3月5日 17時