彼岸の昇華 (ページ2)

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また二つページ2

「ったく…本当にアイツは…」

今日何回目のため息だろう。
入学式で遅刻しそうになり、そして今、迷子になり…
懲りないなぁ。

「無一郎〜」

すると声が聞こえてきた。
細い道の向こうからだ。
恐る恐る踏み出すと、じめっとした湿気が頬を掠める。
こっちに、いるのだろうか？
やっと開けたところに出ると思ったら、そこは藤の花が咲き誇る美しい場所だった。
その中心に無一郎が立っている。

「おい、無一郎！！」

「あら、お迎えみたいよ？」

上から聞こえたソプラノに顔を上げると、獅子色のアシンメトリーの髪を風に靡かせる綺麗な女の人が木の上に座っていた。
思わず息をのむ俺にその人は喉の奥でくつくつと笑う。

「Aッ！またここでサボって！というか、そこは仮にも慰霊碑なんです！」

飛び込んできた背の低いまた顔の整った女の人が木の上の人をAと呼んだ。

「ええ？いいじゃないの、しのぶ。使ってくれた方がその人も本望よ。というかね、その人は慰霊碑なんて望んだのかしら？」

「うう……あ…と「まぁ、ごめんね。仕事するよ」

しのぶと呼ばれた人の言葉をAさんが遮る。
そしてふわりと木から飛び降りた。

「え、ええ？！」

「大丈夫！慣れてるからね」

にこりと笑うAさん。

「ああ、こっちは胡蝶しのぶ。学園の生徒会長よ。
私は瀬嵐A。生徒会副会長。Aって呼んでね。よろしく」

生徒会…

「あ、これは、すみません。俺は時透有一郎です。こっちが双子の弟の無一郎です。…無一郎、挨拶」

肘でつついて促すも無一郎は藤をぼーっと見つめたままだ。
ごめんなさい、と謝ると2人とも少し悲しそうに微笑んだ。