林檎と指環 (ページ3)

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つい先日、断捨離を試みた私はクローゼットとアクセサリーボックスを片付けていた。
するとそれらの中には結婚前に身に付けていたブランド物の洋服や靴、アクセサリーが沢山入っていた。

そう言えばもうずっと付けていないな。

【勝ち組】

そんなわけがない。

毎日子供の世話に旦那の世話、それを繰り返すだけの味気ない生活、どこがいいのだ。
そんなに羨ましいならば譲ってあげたいぐらいだ。

元々、私なんて脇役だったんだ。
どちらかと言うと陽キャラに分類される方だったと思うけれど、どことなく影にいるタイプだった。
一軍のトップを輝かせる影。
そんな存在だったのだ。

そんな私が北斗に選ばれたってだけの話で。

決して娘が可愛くない訳では無いし、旦那が嫌いな訳でもない。

だけれど、誰もが羨むくらい格好良くて優しい旦那も、そんな旦那の遺伝子を継いでいる可愛い娘も私にとっては少し飽き飽きしてきて、もっと身体の奥が痺れるくらいのスリルと刺激が欲しいなんて思っちゃったりしているところなのだ。

＊

“まーま、”

もう少しで2歳になる娘が私の傍に歩み寄ってきた。
ぱっちり二重の中にはビー玉のように綺麗な黒目、ぷっくりした頬にピンクの唇。
ほら、やっぱり可愛い。
親バカかもしれないが、誰がどう見ても可愛いと言うだろう。

『んーどうしたのーー？』

指を咥え、こちらを見つめてくる。
これは娘のお腹がすいたという合図。
よその子はきっと言葉で空腹を示すのだろうが言葉では言わず、仕草で物事を伝えてくる娘は可愛らしい。

そうだ、ご飯、ご飯。
すっかり考え事に夢中になっていて、忘れていた。

作ろう、作らなきゃ。

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