046 ページ6
.
指定された場所で数分待った頃、廊下の向こうから足音が聞こえてきた。
きっとあいつだ。
手に持っているスマホを見ると、もうすぐ着きますというLINEが入っていた。
校内にいるならわざわざ送ってこなくてもいいのに。
あいつは俺の性格をよくわかっていると思う。
俺が素直になれないことも、嫉妬深いことも、気まぐれなことも。
きっと気まぐれな俺が確実にいるのか不安なのだろう。
「おまたせ、瑞稀くん。」
「おう。どうした。」
「ちょっと相談があって。」
「なに？」
「あのさ、今まで言ってなかったんだけどお父さんが今年から単身赴任で関西にいて、今週お母さんがそっちに行くらしくて、1週間ほど家に泊めて欲しいの。」
「なるほど、いいよ。」
「ありがとう、瑞稀くんならそう言ってくれると思ってた。」
「もちろん。」
もっと深刻な問題かと思ったが、家庭の事情で泊めて欲しいと聞いて、子供の頃みたいだと少しだけ浮かれた。
子供の頃もよく泊まったりしたものだ。
なんせ家が隣だから。
そんな浮かれた気分も一瞬で消え去ってしまう。
ふとAが気になってしまい、自然と裏庭の方を見た。
ここは裏庭がはっきりと見える所にあって、裏庭の様子は丸見え。
それがいけなかった。
俺が見た時、Aが作間にキスをされかけていた。
「瑞稀くんどうかした？」
ここ、と眉間を指さしながら俺のことを心配そうに見つめてくる。
きっと洞察力が鋭くて俺の性格を熟知している彼に見抜かれるのは時間の問題だろうけど、今言うことでもないだろう。
だから俺は醜い嫉妬に塗れた愛を精一杯の嘘で蓋をした。
「なんにもないよ、ガリさん。」
.
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 782人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「HiHiJets」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
らい - この話何回読み返してもないてしまうし読み返したくて年に何回か読みに来ちゃう (5月14日 12時) (
レス) @page40 id: 6198431af8 (このIDを非表示/違反報告)
悠 稀 。(プロフ) - ルイさん» 数年前の作品なのにそんなに愛してくださってありがとうございます。現在学業の都合で書き手の活動はお休みしていますが、またどこかで見つけてくださると嬉しいです。この作品も何度でも読み返していただけると嬉しいです。 (2021年4月20日 23時) (レス) id: 44e2d305a4 (このIDを非表示/違反報告)
ルイ - 私の現実ではないって頭の中で分かっているのに死ぬほどないたこの作品をもう1回見たくて1年か越しに見に来ました。また死ぬほど泣きました。きっと何回見ても泣けます！ (2021年4月20日 23時) (レス) id: 83da0ab318 (このIDを非表示/違反報告)
姫華 - このお話おもしろかったです。 (2018年12月25日 19時) (レス) id: 90bdd30ebe (このIDを非表示/違反報告)
アリサ - 完結おめでとうございます。面白かったです！ (2018年12月25日 8時) (レス) id: 726929287b (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：悠 稀 。 | 作成日時：2018年11月17日 20時
