絞殺 (ページ14)

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『ありがとうございます。』

「僕、音楽が好きなんです。」

『そうなんですね。』

「はい。あ、僕の方が二年後輩なんで敬語やめてください、西園寺先輩。」

私は驚きのあまり固まってしまった。
今初めて顔を合わせた見知らぬ生徒が私の名前を知っていて、私が知らないだけで同学年かと思っていたが二歳も下だったなんて。

『そ、そう、後輩...でもどうして私の名前を？』

誰とも群れず、目立たず静かに過ごしてきた私の名前を二個下の後輩が知っているだなんてどう考えてもおかしい、というか有り得ないだろうし、何かの偶然で知ったならばその何かを私は知りたい。

「よく裏庭でご飯食べてるの見るので。」

『あ、そうなの？』

「はい、俺の教室から見えるので。誰なのかなーって思ってたら西園寺先輩だと知りました。」

『へ、へえ～。』

言葉からは私の名前を知ろうとした意図が掴めなかったがどうやらお昼に一人きりでご飯を食べているところを見られていたらしい。

まあ、そんなこと誰かに知られても何も無いから別にいいんだけれど。

「また、ここに来てもいいですか？」

『あ、うん。勿論。』

「やったっ。じゃあまた来ます。」

『うん。』

そういうと出ていってしまった。

そういえばあの子の名前。
聞くの忘れちゃった、なあ。

不思議な子だと、この時の私は感じていた。

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