命短し恋せよ乙女【Yuta.K＆Ren.N】

◎12 ページ12

.





涙のせいで言葉に詰まりながらも岸くんとのあの夜の話をした。

玄樹くんは私が話している間、ずっと頷きながら真剣に聞いてくれていた。
話している時、この人は絶対私を裏切らないと本能的に感じ取り、安心して話すことが出来た。

その日は涙が止まっても尚、半泣きな私を見兼ねて家まで送ってくれたり、玄樹くんの優しさを存分に感じ、その優しさに甘えに甘えた日だった。

だけど、夜になると不安は増すものだ。

誰かに岸くんと起こったことを話しても私の感情はマイナスに向かっていくばかりだった。

薄暗い部屋に1人。

どれだけ泣いても気が済むことはなく、隣の部屋にいる兄に聞こえないように必死に声を殺して泣いた。

そんな日が何日も何日もあって、私は遂に学校を休んだ。
たかが恋愛で悩んで傷ついて休むだなんてなんて馬鹿馬鹿しい。
だけど冷静になればどうでもいいと考えられるようなことでも傷つくぐらいに今の私の心は繊細で脆かった。

抑、恋愛初心者にはこんな初恋、苦すぎてまだまだ早かったらしい。

もっともっと経験を積んで、複数人と付き合い、それなりに触れ合ってきたならば、こんなに心に霧がかかることは無かったのかもしれないと、少しだけ過去の自分を恨んだ。

過去は変えられないのだけど。





.

◎13→←◎11

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す