月に堕ちる (ページ8)

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　約束の日はすぐにやってきた。隣町の駅で落ち合って買い物に出かける。これがいいとかあれがいいとか言いながら歩く。初めての経験。普通の女子高生だった。

「Aちゃんのおかげでいいの見つかったよ。ありがとう」

　お礼に奢ってもらったサイダーを飲む。広い公園のベンチに腰をかける。触れるか触れないかの肩の位置がもどかしい。世の学生はこういう気持ちを経て恋愛へと進むのだろうか。恋愛の経験は無いから分からなかった。

「ねえ、Aちゃんはどうしていつも一人でいるの？一緒にいるとこんなに楽しいのに」

「……一人に慣れてるから」

　一緒にいて楽しいと言われて素直に嬉しかった。それと同時に寂しかった。どうして私は家庭でも学校でも独りなのだろうか。もっと普通の家庭に生まれて、普通に社交的な性格であったならば友達のひとりやふたりいたのだろうか。

　服の下の傷を思い出す。どれだけ年月が経っても消えない。胸が痛くなった。

　炭酸が抜けてきた。そんな時に涼さんから誘いの電話が来る。檜山くんから離れて電話に出る。そうしてまた彼のマンションに向かった。

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