月に堕ちる (ページ6)

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　昼食は屋上で食べる。フェンスが壊れているから誰も入ってこない、し、校則で入っては行けない決まりになっている。広いから陰に隠れていれば誰にもバレずにゆっくり出来る。朝コンビニで買ったフルーツサンドが美味しい。

「あれ、先客」

　小説を読みながらご飯を食べていると入口から声がした。ブレザー姿に爽やかな笑顔はとても似合っている。

「檜山くん、どうしたの？」

「高二の時、屋上で過ごしてたから久しぶりになんとなく来てみたらAちゃんが居た」

　ニコッと笑うと私の隣に座った。高二の時の私は空き教室で食べていたし、高三の檜山くんはお友達が多いから入れ違いになっていたみたいだ。

　同級生の男の子とご飯を食べるのは初めてだったので少し緊張した。檜山くんは他の子に話しかけるみたいに私に接してくれた。

　高校生活三年目にして初めて人とちゃんと喋れた気がする。檜山くんの前では普通の女の子になれた。学校の子と話して初めて笑ったかもしれない。この数分の間で檜山くんのことが知れてうれしいと素直に思えた。

　この時だけお兄さん、涼さんのことを忘れた。

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