月に堕ちる (ページ5)

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　涼さんとの逢瀬は私の日常を彩るスパイスだった。その終わりに家でとんでもない暴力が待ち受けてたとしても涼さんがいるから生きていられる。
　彼は私の命綱だった。

　全身が痛むけれど必死に体を動かし、学校に行く準備をする。昨日は家に着いてからお風呂に入る暇もなく、親から説教をされていた。かなり酷い暴力だった。
　割れたグラスの破片を踏んで足の裏が血だらけになった。それでもいいの、これを乗り越えると彼に会えるから。

　だから私は今日もしっかりと学校に行く。

「おはよう、Aちゃん」

　下駄箱でクラス委員の檜山くんが声をかけてくれた。面倒見が良くて毎朝挨拶をしてくれる。ニコッと綺麗な笑顔が眩しかった。

「おはよう檜山くん」

「なんか顔色悪いけど大丈夫？」

「ううん、ちょっと寝不足なのかも」

　クラスが一緒だから自然の成り行きで一緒に教室に向かった。女子からの視線が痛いけれど私には仲良いお友達はいなかった。

　彼は人気があるクラスメイトだ。優等生の真面目男子だけれど、見た目もよく、明るい。男女共に人気があった。
　あまり興味は無いけれど、以前彼が同級生の女の子に告白されているところを見てしまったことがある。キッパリ爽やかに断る姿を見て、私も同年代の男の子を好きになって、こんな青春を味わってみたいと素直に思った。

　それくらい彼は恋愛小説に出てきそうなくらいの好青年だった。私にも優しくてかっこよくて輝いて見えた。

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