月に堕ちる (ページ15)

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　着慣れた制服を着る。行きなれた道を歩く。顔に笑顔を張りつけて振る舞う。それは家でも学校でも変わらない。

　俺の母はシングルマザーだった。父は大企業の社長で合意の元、数人の女性と関係を続けていたらしい。その中で二人の子供が生まれた。その片方が俺だ。

　人並みに友達もいて好きな子もいて、俺なりの幸せを手に入れて不満はなかった。現にこの間好きな子と出かけることだって出来た。そうしてみてしまった好きな子の身体の傷。

　戸惑っているとスマホが鳴った。

「こうせい、飯いこ。18時に俺ん家ね」

　兄。兄のことは嫌いではなかった。彼の豊かな生活は努力で成り立っているものだった。そう理解していた。

　だけれどさっき見た好きな子の身体の傷が脳裏に焼き付いて離れなかった。
　呼ばれて行った兄の家。入口には好きな子がいた。悲しそうに上を見上げて背を向けて歩き出した。

　なぜAちゃんがここに？

　そのマンションの部屋は沢山ある。別の部屋を訪問していたかもしれない。それでも俺は違和感を覚えた。その日の食事は味がしなかった。

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