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「そろそろ帰ります」
18時が迫った頃、ベッドから降りて制服を着た。幸せな時間だった。制服からはほんのり涼さんの部屋の匂いがした。いい匂い。だいすき。
「ちゃんと帰るんだよ？」
「うん、ちゃんと帰る。帰ったら連絡します」
「まってる」
おでこに唇が触れる。そして抱きしめられる。涼さんの匂い、落ち着く。何よりも幸せな時間。離れたくないかもしれない。そんなわがままは言えない。大人しく部屋を出る。
オートロックの扉を出て、涼さんの部屋を見つめる。私は彼のことが好きなのかな。私は誰かを好きになったり出来るのかな。ううん、これはきっと恋。でもその気持ちに蓋をして少しだけ涙を流した。
人間に対してこのような気持ちをいだけるなんて思っていなかった。朝、檜山くんに見られた傷のことは忘れた。忘れたかった。
檜山くんといる時は普通の女子高生になれる。涼さんといる時は女になれる。どっちが私の幸せなんだろう。
どうしても普通になりたかった。やっと普通になれそうなのに気づいたら涼さんで頭がいっぱいになる。
満たされる。からだが。この欲望は恋なのかそれとも。
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作者名：悠 稀 。 | 作成日時：2024年1月30日 23時
