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彼の声が耳に当たる。唯一全て忘れられる時間だった。不健全な関係でもいい。今は全てが心地いい。心地いい夢の中にいる気分。このまま化石にでもなってしまいたい。
「そういえばAちゃんって誕生日いつ？」
「8月8日です」
「もう少しだね、たのしみ」
誕生日は一緒に過ごしてくれるのだろうか。そんな関係でないことは昨日突きつけられていた。でも、もしかしたら一緒にいてくれるかもしれないという希望を持っていたかった。
「18時に弟が来るんだ。ちょうどAちゃんと同い年」
家族の話を聞いたのは初めてだった。仕事のことや家族のこと、個人的な事は一切話してくれないでいた。だからこそ彼の隙間に入れたことは喜ばしい事だった。
「弟、かっこいい？」
「んー、俺とは母親が違うからあんまり似てないけどかっこいいとは思うよ。俳優顔」
少しチャラめの涼さんとは少し違うんだろうなあ。いつか会ってみたいと思った。まあ、私は彼女でも婚約者でもないから会えないのだけれど。
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作者名：悠 稀 。 | 作成日時：2024年1月30日 23時
