愛を、ください。 (ページ12)

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傷ページ12

『んっ、』

目を覚ますとベッドの上だった。

リビングに行ってからの記憶が無い。

ガチャっと部屋のドアが開く音がして、廉くんが入ってきた。

永瀬「おはよう、お姫様。」

『なんで、』

永瀬「リビングで倒れてたからびっくりした。」

『...そ。』

永瀬「あんまり、無理したらあかん。」

『...うん。』

永瀬「しんどいんやったらいつでも保健室に来ていいからな。」

『...』

永瀬「紫耀にも、頼っていいんやで。」

『...廉くん。』

永瀬「ん？」

『私の鞄ってどこにあるの？ずっと見当たらなくて。』

永瀬「あ、ごめん。俺が預かってる。」

『持ってきてもらってもいい？ポーチとか色々大切なものが入ってて。』

永瀬「うん。待っててな。すぐ戻ってくるわ。」

『うん、ごめんね。』

廉くんが、出ていった部屋は、寂しい。

私が鞄持ってきてって言ったから仕方ないんだけど。

1人になりたかったから、今持ってきてって言ったのに。

なのに、

もうダメ。

この世に、いたくない。

矛盾している事だけど寂しさに押しつぶされそう。

私は洗面台においてある剃刀を持ってきた。

服の袖を捲ると、少し前に切った跡が残っていた。

このことを、廉くんは知らない。

このゾクゾクする感覚が久しぶりで、少し心が震えた。

剃刀に少し力を込め、何度も何度も、手首を切った。

永瀬「お邪魔しますー。」

玄関から廉くんの声が聴こえる。

この手首のこと、バレちゃうね。

血だらけの左手に血だらけのシーツ、

隠さなきゃとも思ったが身体が動かなくて。

もう、なんでもいいやって思ってしまった。

永瀬「ただいまー。...A！？」

『おかえり...』

永瀬「なんでなん...」

永瀬「なんで俺に相談してくれへんの？」

『...』

永瀬「俺はさ、Aの全てを受け入れる。離れたりしやん。家が寂しいなら俺のとこに来ればいい。ずっと、
一緒にいるから。」

『廉くん...』

私は、廉くんに抱きついた。

廉くんは私を強く抱き締めてくれた。

人の温もりって暖かい。

とくん、とくん、と廉くんの心音が聞こえるたびに安心を覚えた。

永瀬「俺が、Aの帰れる場所になる。」

その言葉に、涙が溢れた。

廉くんの真剣な顔に、涙が止まらなくなる。

そして、

貪るようにキスをした。