ちはやふる ―Red string 2―

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玉越side






「富士の高嶺に 雪は降りつつ

もろともに あはれと思へ …」






いよいよ、明日へと迫った東京都大会。






みんなが緊張している空気の部室にかなちゃんの透き通った声が響き、






札を払う音も追って響く。







太一と机くん。





千早と肉まんくん。







読手はかなちゃん。





私は休憩タイム。








「さっきの囲い手破り、力みすぎ。

もっと力抜いて。手首のスナップで」







「自陣はいいけど、敵陣を抜きにいく時はもっと突っ込んでいかないと取れないよ。

思いっきり体ごと、行かないと」





肉まんくんが千早に





太一が机くんに、




それぞれ気になったことをアドバイスしていく。






そして、それを踏まえて払う練習をする二人。









そんな様子を見て、本当に明日で始まりか終わりかが決まるのかと思うと不思議な気持ちになる。









始まりか、終わりか







そんな紙一重の世界で明日私たちはどうなるんだろう。








隣にいたはずのかなちゃんが扉の方で真っ暗になった外を眺めていた。








そんなかなちゃんに声をかける。






「どうしたの？かなちゃん」






「静か…学校中で私たちしかいないみたい」







「さすがにこの時間だもんな」






太一の言葉に時計を見れば下校時刻なんてとっくに過ぎていた。






「"もろともに"はとあるお坊さんが一人孤独な修行に耐えていた時に詠んだと言われています。

山に一本だけ咲いていた桜に向かって、ひとりぼっち同士仲良くしようって呼びかけた。

ちょっと、寂しげな歌ですね…」






そう言ったかなちゃんは外をまっすぐ見つめながら"もろともに"の歌を読み上げた。






「もろともに あわれと思え山桜

花よりほかに 知る人もなし」





下の句は机くんも一緒に読み上げていた。







手に取った札を寂しげに見つめながら。

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