君の蒼い花。2章=オリジナル=

67話 ページ17

「ただいま」
家に帰ると、珍しく雨生が出てきた。
「おかえり、」
驚いた顔で俺の頬をまじまじと見る。
「もうお風呂沸いてるから入ってきな」
「ありがとう」

察したんだろう。きっと。
たぶん泣いた後だから目も腫れてると思うし。

体を素早く洗って、湯船に浸かる。
今日も長い1日だった。
佐倉さんの出産があって、
佐倉さんが赤ちゃんと向かいあえて、
慶太に会って、
亜由美さんに大切な過去のお話してもらって。

お腹を見る。
へその下から伸びる10センチ近くの傷。
これが俺の体に刻まれた
サラちゃんがいた証。

俺の命を助けるために、無理矢理外の世界に出した。
小さな小さな体で、未完成のまま。
なんて残酷なんだろう。
抱いたサラちゃんはぬいぐるみのように軽くて
一昨日には、俺のお腹を蹴ってた子が
手の中にいる事実が怖くて。
泣くの我慢して唇を噛んだら血が出た。
そんな俺の頭を慶太が抱え込んでくれて
やっと泣けた。

ごめんね、ごめんね、ごめんね。
本当にごめんね。
苦しかったよね、痛かったよね。

そう、何度も謝った。
でもサラちゃんの返事はない。

小さな遺体を胸に強く抱いた。

春がやってきた頃のお話。

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