5話 ページ6
「自分の名前は分かりますか？」
『...終尾...Aです。」
「そうですね、では年齢は？」
『....13歳に...なったばかりで。』
俺の返事を聞いたかっちゃんは、ハッとして思い出したかのように枕元のナースコールを押した。
医者と入れ違いに、かっちゃんは名残惜しそうに病室を出ていった。
やってきた医師は、俺によく分からない質問をいくつかしてきた。
名前は？年齢は？今日は何日ですか？
一通り答えながら俺は、自分の手を見つめながら自分の中にある違和感がどんどん大きくなっていくのを感じた。
俺の手って、こんなに大きかったっけ？
幼い頃からろくな食事をしてこなかった俺は、周りの同級生と比べても一回り小さく、成長も遅かった。
体重もあまり増えず、骨のように細い体が嫌いだった。
そのはずが、今の自分の腕は異様な細さは感じられない。
手の大きさも一回りもふた回りも大きくなったような気がする。
未だにぼんやりとした頭を必死に働かせて思い出そうとすると、ガンガンと殴りつけられるように痛んだ。
大した怪我も見当たらないが、俺は何か事故にでも巻き込まれたのだろうか？
「分かりました、では落ち着いて聞いてください。」
質問を終えたらしい、居ずまいを正しながら医者は改まって言った。
「今は西暦20XX年、
あなたの年齢はは13歳ではなく16。
貴方はヴィランに誘拐され、3年分の記憶を失っているのです。
最後の記憶から3年が経っています。」
ヴィラン
誘拐
三年
伝えられた言葉の意味をゆっくりと理解していく。
ああ、なるほど。
背丈も体格も良くなったかっちゃん、やけに低い声、大きな自分の手とどうしようもない違和感。
三年間という空白の月日を、自分でも驚くほど、すんなりと受け入れられた。
何も言わない俺に、混乱しているとでも思ったのだろう。
医者は「困惑するのも仕方ありません。暫くは不安でしょうが、私たちがサポートしますよ。安心してください。」と優しく笑った。
驚くほど俺の心は凪いでいた。
失った三年を悲しむでも惜しむでもなく、三年ということはかっちゃんは今頃高校生か、と他人事のように思った。
ただ１つ。
心にぽっかりと穴が空いたような、抜けるような空虚感の正体だけが分からないままだった。
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ウタ - 次の展開がどうなるのか楽しみです (2018年7月18日 22時) (
レス) id: 5d727cd1f1 (このIDを非表示/違反報告)
雫(プロフ) - めっちゃいい話だと思います！！更新楽しみにしてます！！ (2018年7月16日 8時) (レス) id: 83591e10d1 (このIDを非表示/違反報告)
ゆき(プロフ) - ストーリー展開がとても好みだし、文章が、言葉ひとつひとつが綺麗で好きです。本当に素敵な作品ですね！ (2018年6月24日 21時) (レス) id: bc7a356a9c (このIDを非表示/違反報告)
こパンダ - とてもたのしみにしてます。頑張ってください！ (2018年6月22日 17時) (レス) id: 7360b2bbb8 (このIDを非表示/違反報告)
甘露蜂蜜(プロフ) - あああこれは夢主くん弔くんのこと思い出してほしいやつです…！こういうめっちゃシリアス系好きなので展開がすごく楽しみです。頑張ってください。 (2018年6月17日 23時) (レス) id: 817d133cd9 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：紺碧 | 作成日時：2017年11月13日 21時
