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『みんなどこ行ったのかな？』
「知るか、学食にでも行ってんだろ」
『かっちゃんは行かなくていいの？」
「どうせお前は行かないんだろ」
『バレた？』
「なら俺もいかねぇ」
俺がそう言うと、Aは安心したような寂しそうな複雑な表情で俯く。
クソ髪もアホ面もしょうゆ顔も居ない。
誰もいない教室で、俺たちは机を挟んで向かい合って座る。
あれほど煩かった蝉は、いつの間にかもう鳴いて居なかった。
静けさだけが満ちた教室で、俺たちの声だけが微かに響いていた。
教室に吹き込んだ風がカーテンを揺らす。レースのカーテンの先で翻る青い空は、鮮やかなはずなのに何処かおぼろげだった。
風は、Aの髪を優しく撫でて消えていった。
『かっちゃん、俺幸せだよ』
「そうか」
『夢を見てるみたいなんだ、幸福で幻想みたいな夢を...』
「幸せな夢なら覚めなくてもいいだろ」
そう言うと目の前に座るAは何故か傷ついたかのように顔を歪める。
そんな顔を見ていられなかった俺は、逃げるように手元の課題を進めた。
俺たちの間を静謐が包む。
すっと、Aが息を吸う音がやけに鮮明に耳へ届いた。
『夢は、いつか覚めなくちゃいけないんだ』
ポツリ、零された言葉に課題を解く手を止める。
顔を上げると泣きそうな表情のAと目が合う。
あぁ、俺はこれを知っている。
『ねぇ、かっちゃん』
「ん」
『本当はもう気付いてるんでしょ？』
「あぁ」
そうだろうなと薄々気付いていた。
ここは、この世界はきっと"違う"
『約束、もういいよ』
「約束...」
『"二度は死にたくない"って願い、覚えててくれてありがとう』
そういえばそんな約束をした気がする。
いつだったろうか、まだ俺たちが今よりずっと子供だった頃の話だ。
.
『ひとは二度死ぬんだって』
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とく - 今日見つけて一気見した勢です。凄く素敵でした。良かったです。更新楽しみにしています。 (2020年6月9日 15時) (
レス) id: 7ea0d5ffd3 (このIDを非表示/違反報告)
闇狐 - ビィランとの絡みをもう少し書いて欲しかった (2019年2月11日 22時) (レス) id: b32f6ac6e2 (このIDを非表示/違反報告)
わらびもち - 最高でした！ もう最初から最後まで一気読みで ページをめくる指が止まりませんでした！ [if] もインパクトありすぎで とってもおもしろかったです 次回楽しみにしてます (2018年12月25日 0時) (レス) id: 2c770ba3a7 (このIDを非表示/違反報告)
霊華 - 何か僕の好きな曲に似てる (2018年11月20日 21時) (レス) id: 55c6bf7b1a (このIDを非表示/違反報告)
てい - 最高です、作品の雰囲気が儚くて美しくて大好きです。 (2018年9月8日 20時) (レス) id: c41ce6be94 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：紺碧 | 作成日時：2018年8月10日 20時
