#5 ページ36
「………ふ、ふふふ。本当は随分と子供らしいお方なんですね」
「こどっ…！？」
＿＿＿2人っきりの部屋に流れた気まずい沈黙。
それを先に破ったのは、アズール先輩の堪えきれなくなったような笑い声だった。
“子供らしい”の言葉にまたカッとなって噛みつきそうになるが、今度は堪える。これ以上の失態は晒したくない。
(…でも、これだけは言わせて欲しい)
「馬鹿になさってますよね？」
「ばっ…！？ば、馬鹿になんてそんな！……ただ、その……
…いえ、なんでもありません。忘れてください」
「……なら、先程の私の失態も、忘れていただけますか？」
「…えぇ」
(変な先輩)
結果としてあの失態を忘れてもらうことが出来たし、私も目を瞑るけど…
明らかに先輩がおかしい。メガネを軽く持ち上げるいつもの素振りも、今はただ動揺を収める為にやっているよう。…よく見れば、その手は震えている。
「……それで、もう2つほど魔法薬を持ってこられたようですが、そちらは？」
このままだとまた沈黙してしまいそうで、話を元に戻した。
「…後日にしましょう」
「はい？」
しかし、それに返ってきたのは意外なアズール先輩の言葉で。
「今から話すにはもう遅い。ジェイド達も今の様子では送るのは難しいでしょう。少しでも早く帰るべきだ」
「は、はい…？」
動揺を見せていたのが嘘のような無表情で、先輩は早口に告げる。
おかげで殆ど聞き取れなかったが、とりあえず「帰れ」と言ってるのはわかった。
(…私としては帰りが一人になっても構わないから、話を進めて欲しいんだけどなぁ)
「＿いただいた魔法薬、あれの対価はどうなさるおつもりで？まだ何も払っていませんよ」
少し話をしたらなんとかアズール先輩の意思を変えられないだろうか。
そんな下心でまた話を振る。
「結構です」
「…え？」
「あ、いえ。…対価はもういただいていますよ」
その言葉に首を傾げていると、「Aさんでいう“失態”ですね」と忘れると言ったはずのアレを取り上げられた。「忘れるのでは？」といい笑顔で聞けば、「そ、そうでしたね」と余裕の無い返事が返ってくる。
(やっぱり、先輩が変だ)
…確かに、この状態での取引は心配なものがある。
そう考えれば、気が乗らなかった先輩の提案も受け入れられた。少し、不可解な部分は残るけど。
「それでは、また今度連絡しますね」
「えぇ。是非そうしてください」
寮で待ち伏せされるのは、もう勘弁だ。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 1739人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「ツイステ」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
のま(プロフ) - マザーグースさん» 続編にもコメントして頂きありがとうございます！、ほんとに嬉しくてモチベあがりました…！頑張ります！ (2020年8月12日 12時) (
レス) id: d72737bac0 (このIDを非表示/違反報告)
マザーグース - この作品大好き…更新頑張ってくださいね。 (2020年8月10日 23時) (レス) id: 446891bd7a (このIDを非表示/違反報告)
のま(プロフ) - 桜雪さん» うああ、ほんと読んでくれてありがとう…！そこまで言って貰えるとほんと自信持てます、、更新頑張れる(*´ω`*) (2020年6月15日 8時) (レス) id: d72737bac0 (このIDを非表示/違反報告)
桜雪(プロフ) - どうしてこんな神作品今まで知らなかったのか激しく後悔したよのまちゃん。もう秒でお気に入りした、、、、、、設定も描写もはっきりしていてとっても好きです超面白かった、、！ (2020年6月15日 1時) (レス) id: ef0eaf48d3 (このIDを非表示/違反報告)
のま(プロフ) - Aさん» う、あ嬉しすぎて語彙力が消失してますすみません…！そういったコメント頂けるだけで低評価とか吹っ飛ぶくらいです笑 本当にコメントありがとうございます。自信を持って、完結まで向かわせていただきます！ (2020年6月14日 7時) (レス) id: d72737bac0 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：のま | 作成日時：2020年5月28日 7時
