色を失くして【荼毘】 (ページ16)

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ステインページ16

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ヴィランになれと言われ、成り行きからヴィランになったらしいあの日から暫く経った。Aとしては荼毘の家に居座る理由が出来て良いなあということをぼんやり考えていただけであって、特に罪悪感と善性には一欠片も傷がつくことがなかった。人間とは恐ろしいものだ……と、小鳥を眺めながら考える。

そして進化したことはもう一つ、荼毘にズケズケと物申すようになったことだ。

「ねぇ、コンポタとかないの」
「ねぇよ。何であると思ったんだ」
「カップ麺すぎて死ぬ。あと太る」
「は？知るか」

いや、こんなにカップ麺漬けの生活をしたことがなかったからと荼毘から目を逸らす。そろそろ胃が限界を訴えてきているような気がするが荼毘は平気なのだろうか。いや味覚も火傷で死んでいるのかと思い込み自分を納得させる。

中学校は2年の前半まで殆ど行っていなかった。いわゆる不登校である。流石にこのままではまずいと泣かれ殴られたため学校に行き、言われるがままに志望校を受験すれば『努力が実って』合格することができた。が、こんなんになってしまっては中退もクソもあったものではない。
今の、(他人の)家の中で一日何もせずにぼーっと過ごす状況はやけにあの頃を彷彿とさせてデジャヴを感じることがあった。でも、中学時代は受験があったから家でひたすら机に向かい続けていた気がする。今はそれもないから本当に体たらくである。

荼毘の家にはテレビがないから分からないけど、私がいなくなったことはニュースになっているのだろうか。雄英生だからそれなりに報道されているのか、はたまた一切なし(・・・・)か。流石に相澤先生は気付くだろうな、あの人勘が良いし。

あの無愛想な……担任の顔を思い出しても特に何とも思わない私はやはりロクデナシなのか、だからヴィランになるんだろうと1人で頷いた。まぁ、あの人も一応ヒーローだし敵対意識くらい抱いておいたほうが良い？まぁ面倒くさいし後回しだ。

日差しが強くなってきた。カーテンを閉めようと立ち上がるとずっと座っていたせいで目眩が襲って視界が黒く染まる。少ししゃがんで、また立ち上がった。

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