恋愛低体温2

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所定の場所へと本を差し込みながらも、
ふわふわと足元が覚束無いのは
この一週間、自分でもずっと感じてた。



私たぶん浮いてる。
ずっと地に足ついてなかったと思う。



原因はわかってる。

先週の横須賀デート




アレが効いてるの。
横須賀は私を妖精にしたみたい。

まるで羽でも生えたみたいに
ふわふわ、ふわふわ。




恋は私をバカにする。



貴方に会いたくて会いたくて
仕方がない。

今度はいつ会える？
会うたびに好きになっていく。
どうしたらいいんだろう？



この積み重なっていく想いは
どこまでいくんだろう…






あと何冊かある本の束を
締め付ける胸にギュッと押し当て
小さな溜息を吐いたら…







「なぁにー？なんの溜息ぃー？」

「ひゃぁっ！」







突然本棚の角からひょっこり現れた想い人に
思わず飛び上がっちゃって
手元から落ちた本が
バサバサと音を立てて床に散らばった。







心臓に悪い

前もこんな風に突然出て来て
ビックリしたことあったよね？








「幸せ逃げちゃうよぉー？」





パンパンッと表面を払うような仕草をして
落ちた本を拾ってくれ
"ハイ"って手渡しながらの哲也スマイル。





ダメ…本の次は私。
膝から崩れ落ちる！







「もうすぐ上がりでしょ？
迎えにきたよ。」







バサバサバサッ_____






「あー！せっかく拾ったのにー
だめだよぅー」









ダメなのは哲也さんじゃない？
迎えにきたよ、とか反則

無理。
王子様じゃん！




そんなこと言われたら
せっかく拾ってもらった本も
誰だってまた落としちゃうに決まってる！







迎えに…
迎えに、、



ムリー！
頭の中で鐘が鳴るー！









「今日早く終わったから来ちゃった♪」






来ちゃった♪じゃない！
可愛いが大渋滞だよ！



テヘッとかしてるけど
こっちはもう立ってるのが奇跡なくらい
膝にきてるんだからっ！







「本読んでイイコにして待ってるー」







私が犬なら
今のでキャフンて言って降参







おとなしく席についた哲也さんの後ろ姿を確認して、童話コーナーへと足を向けた。





人魚姫…

小さな私には物語がよく理解できなくて
泡になった人魚姫の気持ちがわからなかった。





泡にならずにずっと傍にいたら
もしかしたら王子様が好きになってくれたかもしれない、なんて思ってた幼き日の少女は…

20年経って、
恐くて気持ちを伝えられない、そんな臆病な恋をしている。





本を棚に仕舞う時、
なんでかな？

少しだけ後ろめたかったんだ。

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