恋愛低体温

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交差点の信号機が青色に変わったら＿＿＿



行き交う人々の波にのまれそうになりながら
目的地に向かって足を前へ





吐いた息が白く空気に馴染んで、

耳と鼻の先がちょっとジンジンしてる。








待ち合わせは
複合商業施設の中にある映画館の前




選んだのは私

ここならいろんなのあるし、
映画終わった後も会話に困らないかなぁ、って…






辺りを見渡してみたけど、哲也さんらしき人は見当たらなくて、

ベンチには先客
テーブルの回りも飲み物を飲んでる女の子達やカップルがなん組か…


しかたなく大きな円柱型の柱にもたれ掛かって
彼を待つことに、、





平日のお昼でも
そこそこいるんだなぁ、





落とした視線は
ブーツの爪先へ。

ヒールを履くのにも随分慣れてきた。




何年も足を甘やかしてきたから
見せ脚になるために今は毎日ストレッチ。

効果が出てくると、自然とスカート丈も上がってくるってもんで、
膝丈まで上がったスカートを
気持ちヒラリ、揺らしてみる。



お腹回りや二の腕だってそう。
冬が終わるまでにはどうにかしたい。







………哲也さん
今日もこの間みたいにキラキラで来る？

私…、
緊張して映画どころじゃなくなっちゃうよ…




それに、、
私、浮いちゃう…

あんなに素敵だったら
周りに"全然釣り合ってない"とか絶対思われちゃう、、




この間買ったコートの襟に口元を埋めながら
小さく溜息。




むっちゃんが無理矢理持たせた洋服は
今日はお留守番。

アレは私の中では下着の部類に属する。
インナーよ、インナー！
私にはハードル高すぎ。

どんな隙間でも ひょろりん入り込めるくらい
細くなったら勇気を出して着てみることにしよう。
その頃には胸も育ってますように。









「なに観るー？」





……いつの間に来たんだろう
隣を見上げると、私より頭ひとつ分大きい
哲也さんは、同じように壁に張り付いてた。




いつも通り。



帽子と眼鏡と、マスクもつけてる哲也さん。

変質者ルック。








それでもキュゥって胸が縮むのは
マスクの下の素顔が素敵なのを知ってるから

彼の瞳がすごーく優しいのを知ってるから。









「観たいのあります？」




俯き加減に帽子を深く被る仕草をしながら
小さく横に顔を振った彼は








「Aちゃんのオススメは？」



帽子のツバから僅かに見えた瞳が
こちらを向いていた。

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