恋愛低体温

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「お先に失礼します」



「お疲れ、三井さん」

「お疲れさまでした」





閉館準備を終えて事務室に戻ると
帰り支度を終えた様子の三井さんが
入れ違いに出ていった。







「雨、あがってるよ。
Aちゃんも気をつけて帰るんだよ。」






人の良さそうな笑顔で出迎えてくれるのは
図書館(ここ)の館長


ヘルプを頼むと
だいたい館長自ら張り切ってやってくる。


35年余り教鞭を執り、生まれ育ったこの町で
校長先生として定年を迎えた。

定年後はこの町の図書館長として
過ごしたかったんだそう。


天下り、あまりそういうのとは無縁そうな
優しくて、人の良さそうなおじさん。








「はい、お疲れさまでした！」







それから、先程帰って行ったのは、三井さん

キッチリした性格で
経理担当の仕事の早い事務員さん。







デスクの上の荷物をリュックに詰めて、外へ

ドアを開けた瞬間、モワッとした生ぬるい空気が身体中にまとわりついてきた。
雨上がりで湿気を含んだ不快な空気。





リュックの中から取り出したハンカチで
濡れたサドルを綺麗に拭いてから
自転車に跨がった。







行きとは違い快適な下り坂。
冬場は真っ暗だけど、だんだんと日が長くなってきている今からの時期は
ライト無しでも平気なくらい。




肌は湿気でベタつくけれど、
顔に当たる風は気持ちいい。






雨上がりの匂いがする







坂の下のバス停を
バスが通過していくのが見えた。






職場から家までは自転車だと15分くらい。

帰りにスーパーに寄って
次の日のお弁当のおかずになりそうな献立が
その日の夕飯のメニュー。





帰ってご飯を食べて
お風呂に入って眠る





それが私のルーティーン






特に不満もないけど、
面白味もなにもない 代わり映えのない毎日。








私の世界は
セピア色で出来ている。





色のない世界に

私は住んでいる＿＿＿＿

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