恋愛低体温

30 ページ30

ピル…





洗濯物を干し終わって
ベランダから帰ってくると
テーブルの上の携帯が短く鳴った。



その場に洗濯カゴを乱雑に置いて
飛び付くように携帯へ。









「うふふ…」




ビーズクッションの上で
コンパクトに身体を折り畳んで
携帯片手に朝からウフウフしてるなんて
少し前の私が見たら"馬鹿じゃないの？"って言ったかもね。







メールをくれるのは
いつもお母さんやお兄ちゃんだったし、
そもそもそれもたまに、の話だったわけで…


私の携帯なんて
ほぼ活躍の場がなかったと言ってもいいくらいに時計代わり。






それがメールをする相手が出来て以来、
やっと本来の目的で使用するように。



彼はそんなにマメじゃない。
かといって、マメじゃない訳でもない。



初めの頃は一日に一通くらい。

【おはよう】とか
【おやすみ】とかそういった感じの。

それに私も返事を返す感じだった。


たまにメールがない日があったりもするけど
彼はほぼ毎日くれる。


それはずっと今に至るまで継続中。





そのうちに
明日は朝から行くよー！とか
明日は行けないー、とか

そんなメールも来るようになって…
そうしたら…

来ないのかー、って
ちょっとガッカリしちゃう自分がいたり、
誰かが入ってくる度に入り口を見たりして
なんとなく待ってる私がいたり…ね。








「あ！やだ！時間！」




いつもついてるだけのテレビ

のんびりしてる時間はないよ！って
めざまし時計な体を揺らして
必死に訴えかけてくれたお陰で、我に返った私。
慌ててキッチンに飛び込んだ。





スープジャーに温めたスープを注いで…







「急げっ！」






洗面所に洗濯カゴを放り込んで
上着を羽織ながら階段を駆け下りた。







冷たくなってきた空気が
風を切る私のおでこにあたる

薄手のコートの裾もヒラヒラ





相変わらずあの坂は半分しか登れないけど、
前よりも今は仕事に行くのが
楽しみになってきている。






彼は不規則な生活をしているのか
時間はまちまち。

図書館に来る時間もまちまちだけど、
メールをくれる時間も…





今はラリーをする毎日。

【おはよう】
【おはようございます】
で終わる毎日じゃない。





たわいもない日常を報告しあったりする仲

仕事が終わって打ったメールの返事が
すぐ返ってくる時もあれば、
私が寝てる間に返ってきてることもある。


それに対して、遅い時間に返さない方がいい？って、いちいちお伺い立ててくるあたり
彼の人柄がいい証拠。

31→←29

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す