恋愛低体温

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そんな空気を読んでか
彼女の方から口を開いてくれた。






「前にね、此処へ迎えに来る時に
ついでに珈琲買って来てって
頼まれたんです。」


「……はぁ、、」






珈琲…？






「次の予定もあるから急いでるっていうのに、
その珈琲持って
フラッとどっか行っちゃうんだもん。

何処に行くんだろ、って見てたら、
このベンチに座ってた貴女のとこ。」





クスクスと笑いながら
彼女は首を竦めてみせた。







「あのっ！私っ…」



もし彼女なら…
嫌な気分になっただろうと思った。







「たまに不思議な人ですけど、、
すごく良い人。」





何故だか、私の目を見て
彼女は微笑みながら、そう口にした。






「彼を嫌いな人っていないと思う。
本当に優しくて、ちっとも偉そうじゃなくて、ほんと…素敵な人。」







やっぱ、、そうなんだ…

私が感じてたの…間違いじゃなかったんだ、、
いい人…なんだ







「このあいだ、、」


「ん？」


「土田さんに助けてもらって、、」


「そう、、」







何故、彼女がこんなこと
私に言い出したのかは分からない。

でも、
なんだか心の奥が温かくなったのは、確か。








「後藤ちゃん、おまたせ」





ふわりとした風と共にやってきたのは、
噂の彼。






「いこっか、」





今日も穏やかな声が耳に届く

立ち上がった彼女がペコッと私に頭を下げ、
私も慌てて頭を下げた。


先に歩き出した、彼女





正面にそびえる彼の背中
てっきりそのまま歩いて行くとばかり思っていた、その背中は



くるりと振り返り、
私を見下ろした。






＿＿＿え？






そう言葉にする間もなく
彼は膝に手を付き、身を屈め

そして、








「まだなのかなぁー、って
ずぅーっと待ってるんだけどなぁー。」




唇をとんがらかせた。









「え？」


「なんだっけ？映えなやつ？」









「あぁ！」



サンドイッチ！！







「あー絶対忘れてたぁー。んもーう。」


「明後日！明後日来ますか？」


「んー、じゃぁ…来ようかな？」






ぷぅーって
子供みたいに頬を膨らませたと思ったら







「楽しみにしてる」





逆光の中、
フワッて口元だけが
緩やかに上がっていくのが見えた。





上がる口角は
いつも私の胸を叩く





遠ざかっていく背中を見つめている間
私はひたすら浅い呼吸を繰り返してた。









こういう約束…何年ぶり？
たかが…お昼の約束なのに、、




なんてことない約束
意識するなんて

いい歳した女が…




どうかしちゃってる

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