Powder Snow〜御曹司との恋〜

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「剛典くん、
今日ね、貴方のお父様の 執事をなさってる方がいらしたの。」









「ごめんなさい、剛典くん。

貴方のお父様に、
睨まれるわけには いかないの。」








「もう、こうして 逢うのは
よしましょう。」









「待ってよ、響子さん！
別れるつもり？嫌だよ！
響子さんと逢えなくなるなんて….」








「そんなの気にしなくていいから！
俺が なんとかするから！！」








「俺のとこに来てよ…
全て捨てて…」









「それは、…無理よ。」





女は 微笑んで、
坊ちゃんの 頬を撫でた。









坊ちゃんの、一年越しの 秘密の恋は
旦那様の耳に入り、こうして あっさり終わりを迎えることとなった。









そりゃ、そうだろう。
プライドの高い女だ。





こういうタイプの女は、
自分が一番でないと 気に入らない。


外でも、家庭の中でも。


求めるのは、
『デザイナー・KYOKO MIHARAの夫』
自分が常に 優位に立ち、
女王様でなければならない。









曲がり間違って
坊ちゃんとの結婚に こぎつけたとして、

付く枕詞は、『五十嵐グループの跡取りの嫁』






プライドの高い、この女には 耐えられないんだ。
自分より、ビッグネームで
美原 響子の名前が霞むことが…。



自分のネームバリューを捨ててまで、
五十嵐に入り、剛典さまを 影で支える 妻となることが…。



スポットライトが 自分に当たらないことが
耐えられないんだ。








そう、
最初から 自分に都合の良い夫も、
『美原 響子』の名も、
手放す気などなかったのだ。

離婚する(その)気もないくせに、坊ちゃんに近づいた。









結局、美原 響子は、
今の自分の地位を 守るために、さっさと 坊ちゃんを切り捨てたのだ。
旦那様の怒りを買って、潰される前に…。





当たり前だろう。

この国で、旦那様に睨まれて
生きていける人間などいない。








『五十嵐グループ』は、

日本の目であり、中枢であるのだから。









ただ、
この日を境に、坊ちゃんは変わられてしまった。








俺の知る、天真爛漫で、可愛い笑顔をふりまく
坊ちゃんはどこにも見えず、








何かを忘れるかのごとく、以前にも増して
仕事に打ち込まれ、
心を閉ざし、笑うことは なくなってしまわれた。









そのお姿は、『笑わない貴公子』と呼ばれ
冷淡にも、相手を切る 仕事のやり方に
旦那様も義兄様も 困惑される程…

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