緑眼の獅子 ページ7
誰かとの入れ替わりなんてそんな摩訶不思議なことあり得るはずない、と信じがたい気持ちは強い。
でも、否定する根拠は非力でどこにも無く、
私の容姿がまるっきり変化している事、
卒業前だったはずが新入生に、しかも全く違う学校の新入生になっている事、
住居にたどり着けてしまったこと……などなど、私が別人と入れ替わってしまったことを証拠のほうがポンポンと見つかってしまうのだ。
そう考えるほかなくなってしまうのだ。
そうなれば、私は明日から「私」として生きていくしかないだろう。
困ったことに、私は「私」がどんな人物なのか演じられるほどに知っていない。
翌日、学校に来てみたはいいものの、一体どのように振舞ったらいいのか。
始業式前に倒れ、クラス内での自己紹介を見事にすっぽかした私は「昨日倒れたやつ」「昨日いなかった人」として少し注目を浴びてしまった。
こういう時に真っ先に話しかけてくれるのは委員長タイプの人間だ。
はじめましてから始まり、名前だけの自己紹介が続く。佐藤冬実さんというらしい。
「私」は本好きだが、文学少女と言えばおとなしい感じの子だろうか。
演技にはまったく自信がないが、やってみるか。
第一印象はよさげだった。
話しかけた人々は私を静かな子と認識していったようだった。
佐藤さんは親切なことに、私の座席、周辺のクラスメイトの紹介など、昨日の私が知るべき情報のほとんどを提供してくれた。
席は後ろの方でやや中央よりの、いいのか悪いのか微妙な位置であった。
周りの席の人はどの人も普通で良い人で、仲良くできそうだった。
着席3分前に元気よく教室に飛び込んできたこいつが私の右隣りでなければ、私の二度目の高校生活は至極穏やかだっただろう。
「あれ？君昨日いなかったよね？」
声がほぼ真上から降ってくる。
私の首は巨人を見上げるには対応していないので目線を合わせてくれると非常にありがたい。
右隣の席に座ったこの巨人はただデカイだけでなく、銀髪緑眼の超美男子だった。
「なんで？寝坊した？」
「あ、いや…。貧血で始業式の前に倒れて」
「貧血？」
この大男は確か、何とかリエーフという名前だったはずだ。
苗字は何だったか、マンガを一周読んだだけなのでこの世界の詳細は思い出せなかった。
「私、AAって言います。あなたは？」
「俺？灰羽リエーフ。ロシア人とのハーフ」
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作者名：餃子 | 作成日時：2018年11月20日 21時
