喝入れ係 ページ25
「じゃあさ、自主練とか付き合ってよ」
「私が？」
ボール拾いをするのはもちろん構わない。でも基礎で、しかも守備力をあげたいなら私より芝山くんとか、夜久さんに頼んだ方が良いんじゃないか。
私は疑問符だらけの頭を傾げた。
「リエーフ自主練するの？」
芝山くんがひょっこりと会話に参加した。
私とリエーフ二人で今まで話したことをザックリと説明すると、なるほどね、と納得したようだ。
「いいんじゃない、マネージャーが手伝っても」
「手伝いって、私何をしたらいいのかな」
リエーフに聞いてみると何も考えていなかったらしく、私が投げかけた質問をそのまま芝山くんにしていた。なんやねん。
「えー…守備の練習でしょ…
スパイクとかサーブを打つとか…？」
「いや無理だから」
そもそも私はボールのコントロールすらままならない。
ジャンプ力だってヤク〇ト位の高さがいいとこだろう。ヤ〇ルトジャンプ。
「やっぱり先輩に聞いたほうがいいよ。そっちの方が早く伸びるかも。
喝だったらいつでも入れるよ」
芝山くんは私が言った喝に笑った。
リエーフも同じように私の冗談に笑うと思っていたら、彼はあまり楽しくなさそうだった。
どうしたんだろう。
今日の帰りは遅くなってしまった。
みんなが用具を片付けている間にいつもなら部室へ道具を戻しに行っているのだが、
今日は監督と話をしていたので、みんなの着替えが終わるまで待たなければならない。
そろそろか、というところで女子更衣室を抜け、部室へ向かった。
まだ誰か中にいるみたいで、明かりがついていた。まだいるのかよ。
私はこれ以上時間を無駄にしたくなかったのでノックをしてはいることにした。
「Aです。今入っても大丈夫ですか」
「…うん」
小さい声だったけれど多分OKが出たはずだ。
別に野郎の上半身なら嫌になるほど見てきたので相手が着替えていようがいまいがかまわない。
決死の覚悟で行こう。
「失礼しまーす…」
引き戸を開けるとそこには壁際で体育座りをしている研磨さんがいた。
手には携帯ゲーム機。
「あ、ゲームしてる」
棚にテーピングセットとジャグを置いてから研磨さんの邪魔をした。
研磨さんの隣にかがみこむ。
「何のゲームですか」
「ファイナル〇ァンタジー」
ぶっきらぼうに答えた研磨さんはどうせ知らないんでしょう、という感じだった。
その通りです。
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作者名：餃子 | 作成日時：2018年11月20日 21時
