こころ ページ16
今日は基礎が中心のメニューのようだ。
まだ新年度が始まってすぐで、バレーを始めたばかりの1年生もいるので、まあそうだろう。
基礎錬は見た目こそ地味だが、よくよく見ていると面白いものだ。
水泳をやっていたので肩回りの筋肉についてそれなりの知識はある。+アルファで足の筋肉もいくつか覚えていたが、どの動きがどの筋肉に効果があるのか観察していると興味深い。
何より、これがバレーで一般的なトレーニングなのかは定かではないが、体幹を鍛えるトレーニングが多めに含まれているように見える。
水泳で体幹は何よりも重要とされているので、そういったトレーニングにはつい見入ってしまう。
そんな感じで、練習を見ているのに興を見つけていたらもう1年の下校時間になろうとしていた。
一度召集がかかり、1年のみ挨拶をして解散すると先輩たちはゲーム形式の練習をするようだった。
「Aさん、どうだった!?」
「うわあっ‼」
突然後ろの上の方から声がかかる。心臓止まってしぬかと思わされた。
「あ、ごめん」
「心臓ちっちゃいのよ勘弁して」
「むしろ図太いほうじゃん」
お互い笑って話を続ける。
自分がここまで男の人と仲良くなれるなんて思っても見なかった。
それは灰羽くんの性格もあってここまで仲良くなれたのかもしれないけれど。
「って、そんなことより!バレー部、入る気出た?」
「あーえっと、興味は出た」
灰羽くんにあそこまで言われても私は入らないを通すつもりでいた。
正直、今まで見学に持ってこられた私を見て分かる通り、私はとても押しに弱いタイプなのだ。
だから、灰羽くんに熱弁されてしまったあとではバレー部にとても興味がある。
それでも入れないのはやはり、漫画の世界ということが大きい。
なんでだよー入ってくれよーと灰羽くんにゆすられる。
ごめんね灰羽くん。なんども誘ってくれてるのに、強情な私が。
「灰羽、無理強いはよくない」
落ち着いた大人の声の方を向くと、監督が立っていた。
「あ、監督さん。今日はありがとうございました」
「選ぶために情報を集めることは重要だからね。
……君は君の心が向く方に進めばいい」
「そう…ですね。ありがとうございます、そうします」
心が向く方に進めばいい。
監督のその言葉には、
「君が入ったことで負けるような弱い部ではない」
そういっているような、確かな重みがあった。
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作者名:餃子 | 作成日時:2018年11月20日 21時