見学 ページ12
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このまま灰羽くんの主張の強さを何とか利用して影を薄ーく薄く、
「バレーには興味ないけれど何となく来た人」を演出できないだろうか。
「Aさんもつれてきました、マネージャー希望っす!
…あれ、Aさんなんで俺の後ろにいんの?」
灰羽お前!!!!!!!!!
「はっ!?ちょ、私そんなこと一言も」
「え、でも見学きてるじゃん」
「お前が連れてきたんだろ!」
あ、ああ……私の隅っこ暮らし作戦が…。
こいつは私の作戦をことごとく崩壊させてくれる。
ゆるさん。
「あれー?この前の貧血少女じゃないですカ」
「貧血少女じゃないです」
「もしかして僕に惚れて来ちゃったのかな?」
「絶対ないです」
この人、漫画で見る限りは活躍がとてもかっこいい人だったのに、こう対峙してみると面倒だ。
「黒尾、あまり新入生を困らせるんじゃねえぞ。
ごめんな、こんなのが主将で。ほかにも見たい部活があるだろうから、その時は声かけてくれればいつでも行っていいからな」
巨人ばかりの中で初めてみる普通の大きさの人。
色素の薄い髪で、かわいい感じの顔立ちの先輩。この人がいてくれてよかった。
帰る時もこの人に声をかけることにしよう。
「はい、わかりました。ギャラリー(二階の観覧席)で見学させていただきます」
「えっAさん近くで見ればいいじゃん」
「灰羽っていう人に巻き込まれるからヤダ」
ステージの袖にある階段から二階へあがると、コートにいる人たちが上から見れて、全体の動きがよくわかる。
そして一番の魅力はバレー部の誰にも干渉しなくていいところだろう。
今日は灰羽くんやほかの体験者たちも練習に参加するようだ。
先輩たちの輪に交じって準備運動を始めた。
バレー部って普段どんな練習をするのだろうか。
私がもといた学校には残念なことにバレー部は男女共になかったので、身近にみることができたのは体育の授業くらいだった。
いくら漫画で得た知識がいくらかあるとはいえ、やはり初心者なので、バレーについて知らないことは多い。
初心者が多いので、練習はほとんどレクリエーションといった感じのものだった。
先輩と組んで対面パスをして、これからミニゲームを始めるようだ。
対面パスを見た感じ、やはり初心者は動きにぎこちなさがあるものの、運動神経が良いのかそれなりに返球ができていた。
さすがだ、女子だったらこううまくはいかないだろう。きっと四方八方にボールが飛んでいく。
私がその代表格だ。
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作者名:餃子 | 作成日時:2018年11月20日 21時