保健室 ページ1
目を覚まして、まず視界に映ったのは白い天井だった。
少しづつ視界がはっきりしてくると、白い天井はU字に曲げられたレールと、そこから垂れ下がる白いカーテンに切り取られていた。
どうやらここは病院かなにか、医療機関の様だった。
つまり私は病室にいるのだろうか。
上体を持ち上げると予想した通り、白いマットレスと白い掛布団。用意されているものは何もかも白。
しかし、病院で寝ている人には似つかわしくない格好、学生服で私はいた。
しかも、その制服というのは私にはまったく見覚えがなかった。
セーラーのようなデザインの制服に、胸元には赤いリボン。
まだ肌寒い時期なのか、紺色厚手の生地で長袖だった。
はて、私の高校はブレザーだったはずだが？
白いベッドに制服であることから、ここは保健室だろうと予想した私はとりあえずカーテンを開けて先生か誰かいることを確認することにした。
期待通り、白衣で机に向かい作業をしている女の人が真っ先に見つかった。
「あ、あの…」
もともと会話上手ではない私は恐る恐る声をかけた。
すると保健室の先生は快活な性格なのか、とてもはきはきした物言いで返答をした。
「あ、起きたね。体調は大丈夫？貧血で倒れたっぽいけど」
「あ、いえ…。特に問題ないです」
私は貧血で倒れたのか。しかし私は今まで一度も倒れるほどの貧血を起こしたことはなかった。
次々と疑問が出てくるが、まず手始めにここがどこなのかを確認するとしよう。
何せ知らない学校の、勝手の分からない保健室で、初対面の人といるというのはどうしてもつらい。
「あの、ここは…」
「保健室だよ。あなた、もう顔色はいい感じだし、家が近いならもう帰った方が良いんじゃないかな。始業式も終わって、あとはもうオリエンテーションぐらいしかやることないだろうし、学校にいるより家にいた方が気が休まるでしょ」
そこに荷物あるからね、と元いたベッドの足元を指さすと、確かにそこには中身があまり入っていなさそうな黒いリュックが置いてあった。
これは本当に私のリュックなのだろうか。
なかなかせっかちな先生だ、いう事は一度に言ってさっさと自分の作業を再開してしまった。
私はわけのわからないまま、「私の荷物」を背負い、挨拶をして保健室を出た。
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作者名：餃子 | 作成日時：2018年11月20日 21時
