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あれから連絡を取ったり、会ったら挨拶したり、顔見知りから友人くらいまでには関係性が変わった。呼び方も変わった。
「あ、おはよう」
「っ!おはようございます!」
今日もすれ違い様ではあったけど、挨拶を交わした。話し掛ける前はただ無表情に前を向いていただけなのに、声を掛けたら満面の笑みになるんだもん。
そんな、俺だけが“特別”みたいな感じを見たら、気持ちに変化が起きるのは当然のことだと思った。
春休みに入る前、あの駅のベンチでAを待っていた。通学路に咲いている桜を見ていれば、あの時と同じように突然目の前に現れた。
「福良さん、お待たせしました」
「あ、うん」
「どうかしました?」
もう何度もイメージトレーニングしたんだし、今さら何を迷うというのか。
ふう、と深呼吸して立ち上がる。
「A」
「なんですか?」
目の前を桜の花びらが、ひらひらと舞った。
「この半年くらい、Aと色んな話をして、沢山色んなことを知ることが出来て、俺はAのこと好きになったみたい」
「え、、本当、ですか?」
「“一目惚れした”って言ってくれてから時間経ったけど、あれはまだ有効かな?」
Aがもう自分を好きじゃなかったら、そんなことないと思いたいけどわからないから。
「そう、ですね。あの頃より、もっと福良さんが好きになりました」
「それじゃあ、俺の彼女になってくれませんか?」
「っ、はい!よろしくお願いします」
俺の大好きな笑顔に薄く涙を浮かべるAは桜のように頬をほのかにピンク色に染まっていた。
あの時のAの顔は今でも忘れられない。
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作者名:*ゆ う* x他3人 | 作者ホームページ:
作成日時:2021年3月14日 6時