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後ろから走ってくる音が聞こえる。
肩を掴まれて振り返ると大好きな彼がそこにはいた。
「ったく…何でなんも言わないで立ち去ろうとしてんの!?まだ俺、Aに言わなきゃいけないことあんのに…ッ!」
「…渡辺くんは、もう私なんかと一緒にいちゃいけないと思って」
「はあ?私なんかって言うなよ!Aだから一緒にいたいんだろ!?俺の気持ち、分かってるんだろ!?」
「渡辺くんの気持ち…?」
卒業証書が入った筒を持ちながら私を抱き締めてくる。
こんなに近くに渡辺くんを感じたのは何年振りだろうか。
「A、好きだよ。ずっと一緒だ。今も、これからも」
「…渡辺くん?」
「Aも好きだろ?俺のこと」
全てお見通しなんだね、渡辺くんは。
動画内で弄られるようになったから指輪は外したけど、それ以外は着けてるから。
だって、Aの気持ちが伝わるプレゼントだからって。
渡辺くんが欲しいって言ったからじゃんって泣きながら私も強く抱き締める。
長い時間をかけて正直に伝えるよ。
もう伝わってるんだけどね。
「渡辺くんのことが大好きっ…!」
「よく言えました」
卒業証書の入った筒で頭をコツンと叩く。
痛さも分からないくらい嬉しいよ。
ひとりで赤門をくぐった4年前。
ふたりで赤門を出る今日。
これからも一緒だよね、こうちゃん。
ー 桜が咲く頃には。ー
***
始まりと卒業をテーマに書いてみました。
春は別れの季節もあるけど新しい始まりもあるよ。
進路も就職も恋愛も同じ。
色んなことを経験して大人になるよ。
きっと桜、咲くよ。
*ゆ う*
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作者名:*ゆ う* x他3人 | 作者ホームページ:
作成日時:2021年3月14日 6時