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「ちょっと待って、やりたいことがあるんじゃないの?」
混乱した様子の彼は、焦ったように声を荒げる。
『QuizKnockの皆の、伊沢さんの役に立てる仕事がしたいです』
静かに、けれどきっぱりと言い切る私に、少しだけ彼が怯んだ。
「…いいの?そんなの俺の得ばかりだよ?」
眉を下げて、なぜか泣きそうな顔をしている。
そんな彼を見て、私は逆に清々しいほどの笑みを浮かべた。
『私がそうしたいんです』
その決意が揺らがないことを悟ったらしい彼は、頭を雑にガシガシと掻きながらため息をついた。
「はぁ…遠くない未来にAちゃんの人生全部貰うつもりでいるから、せめて仕事は好きなことさせてあげたいと思って本心は嫌だったけど就活応援してたのに…」
『え?』
思いがけない彼の本心に、今度は私が驚かされる番だった。
そして、まっすぐに私の目を見据えて。
「ずっとずっと、俺と一緒になるんだよ?今は学校とか、家にいる時は離れてる時間はあるけど。結婚したら、家で一緒。それで仕事も一緒。たまに俺は外に仕事に行くけど…それでも本当にほぼずっと一緒だよ」
彼のその言葉に、私は迷うことなく頷いた。
『考えただけで、幸せです』
すると彼は一瞬だけひどく悲しそうな顔をして。
「なんでそんな可愛いこと言うの…」
私を強い力でギュッと抱きしめた。
「もう二言はないからね?今更やっぱり他の仕事してみたいとか言われても金輪際許さないから」
必死になってそんなことを並べ立てる彼が、私は失礼ながら面白く感じてしまって。
『ふふ、そんなこと言わないですよ』
思わずクスクスと笑いをこぼせば、なぜか彼は「あぁ、もう…」と言いながら私を一層強く抱きしめた。
自分の口にさえすることのできなかった夢が叶い、私は彼の腕の中でこれ以上ないほどの幸福感に包まれる。
こうして私の就活は、唐突に幕を下ろすこととなった。
どうやら卒業後は株式会社QuizKnockに就職、そしていつかは伊沢さんのもとに永久就職することになりそうです。
***
春をテーマにした今回のコラボ、いかがでしたでしょうか。
私が最後を飾ってしまっていいのだろうかと思いながら、この後書きを書いています。
今回コラボさせていただいた佐伯さん、亜杞さん、企画いただいたゆうさん、本当にありがとうございました。
私が後から加わるような形でしたが、温かく迎えてくださりすごく嬉しかったです。
またコラボしたいなぁ。
ここまでお付き合いいただきありがとうございました。
Annie
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作者名:*ゆ う* x他3人 | 作者ホームページ:
作成日時:2021年3月14日 6時